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第26話「内より響く声」


「最後にここが居住区。主に非戦闘員の人達がここで暮らしているわ」


司令室から出てから、アインスはセラの案内の下、エリア・ロストを案内してもらっていた。


道中、家の外で過ごしている人達とも挨拶を交えながら、セラはついさっき会ったばかりのアインスにも他と変わらない距離で接していた。


アインスは歩きながら、居住区を眺める。

てっきり第八区画の様にテントや廃材をメインに使っているかと思っていたのだが、ハウンド・ソードの居住スペースの殆どはテントの他に、簡素ではあるがちゃんとした建材で建てられていた。


アインスが驚いている内容に気付いたのか、セラは年頃の少女らしく、にっこりと微笑む。


「意外とちゃんとした家が建ってるでしょ?」

「うん。第八区画はここまでしっかりとした家は皆無に等しかったから」

「ふふ、そう言ってもらえて嬉しい。といっても、材料とかはヤクト商会から提供されたものなんだけどね?」


アインスの言葉は淡白だったが、セラは困ったように、ちろっと舌を見せ笑う。


「ヤクト商会……。やっぱりこっちでも協力してたのか」

「じゃあ、第八区画でも?」

「オレは会った事はないけど。全部、ホルガー達が対応してた」

「中々、不思議な人達だものね」


居住区を抜けながら、セラとアインスはまっすぐ奥へと進む。


ヤクト商会。エンデが地上を支配した後、暫くして現れた集団で、彼らはエンデに抵抗する勢力に平等に、有り余るほどの武器や弾薬、その他諸々の活動や日常生活に必要な物を無償で提供してくれている。


レジスタンスが『殲滅者たち』相手に永く戦えてきたのも、彼らがいてくれたからこそなのだが、同時に手放しで信用するには難しい相手でもあった。


正体不明なのもそうだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


エンデが支配するこのフィラトルに於いて、それだけの事が出来るというのが不信を抱くには十分だった。


「やっぱり、疑っちゃうよね。」

「……顔に出ていたか?」

「ううん。口に出さない人が多いけど、皆、内心ではそう感じているもの。助けてくれてる人達にそんな事を思っちゃうのは、悪いことなんだけどね。この場所を提供してくれたのもヤクト商会なんだし」

「この場所を?」


「うん」と頷き、セラは少しだけ早足でアインスの前を歩き、ある程度歩いたところでスカートを翻しながら振り返った。

気付けば司令室があるエリアからも居住区からも大分離れ、辺りは自然が広がっていた。


「古い言い伝え。始まりの人間が過ごしていたとされている地、エリア・ロスト。悪しき者が干渉することの出来ない聖域と言われているわ」

「――――――――――っ」


こちらを見て微笑む笑顔。その笑顔が、アインスの脳裏を電流の様に駆け巡った。


「ぐ、ぅ………………!?」

「アインス?!」


突然膝を付き、頭を押さえるアインスを見て、セラが駆け寄るも脳を刺すような激痛でそれに気付く事すらできなかった。


この景色なのか、それともセラに対してなのか、一瞬だけ何かがフラッシュバックした。そして……………


『示せ、示せ。正当なる■■を我が前に示せ』


「はぁ、はぁっ、はぁ………、はぁ…………っ!」


暗闇に包まれた場所、最奥に壁のように聳える玉座。歯をむき出しにして笑う男が何かを要求する。

そんな物は抱いたことは………ちがう。そんな物をオレはまだ知らない。

何かを要求する声に頭が痛む。吐き出す息はただ、荒く―――――――


「アインスッ!!!!」

「…………っ!?」


誰かの心配する声が響き、あれだけ苦しかった痛みが嘘のように引いた。

膝を付いたまま見上げると、声の主はセラで、泣きそうで、心配そうな顔で見下ろしていた。


「大丈夫、アインス……ッ」

「ああ、すまない。………もう、大丈夫だ」


息を整えながら、あの声を探るように意識を自分の内に沈める。


しかし、声はもう、聞こえなかった。



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