第22話「奇妙な武器と、ある男のこと」
「まず最初に聞かせてほしい、処刑者アインスと、その相棒である白竜ツヴァイ。君達が何者なのかを」
ファータからの問いにアインスは一度、アランとロジャーの方を見た。
2人はただ、無言で頷き、アインスも頷き返す。
「……ファータ。恐らく貴方は知っていると思うが、オレは陥落するまでホルガーの部隊、第八区画に身を寄せていた。彼らに拾われる少し前にオレはツヴァイと出会い、その前は…………上から来た」
アインスは自身の経緯を、アラン達にも説明したように語る。
道中、もし聞かれれば素直に伝えた方がいい、と言われたからだ。
「……………上?」
「ある場所から出てきて、それから空から降りてきた。そこが何処かは分からない」
「それは……、何か空を飛ぶ道具とかではなく……」
「そのままの意味だ」
「……………………」
「何じゃそりゃ………」
若干、言いづらそうに説明するアインスに思わず、チェスターがそう溢す。
ファータも同じらしく、口にはしないものの老獪な彼には珍しく、あまりにも荒唐無稽な話にぽかんとした表情を浮かべた。
これをロジャーやチェスターが言ったのならば、彼は即座に医務室にでもぶち込んでいただろう。
セラに至っては目が点になっていた。
「あー、その……、何処だか分からない場所で君は何をしていたのかね?」
「ある男と殺し合いに近い形で修行をつけてもらっていた。その時に、この2つを託された」
そう言ってアインスは、全員があまり気にしないようにしていた物を……、腰から下げた光さえも反射しない黒い剣と、身に纏う竜の翼膜の様なマントを見せる。
報告にあった、敵部隊を殲滅した力の源……というのを、言われるまでもなく全員が察した。
この世の材質ではない。少なくとも、フィラトルにこんな物は存在しない。
人では作れない、人では打てない。否、例え人がどれだけ道を道を極めようとも、それは永劫、人が辿り着いてはいけない極致にあった。
それは一目見て分かることだった。
「……その者が何者かを訪ねても?」
視界に入るだけで感情を揺さぶられる……、それを抑えながら、ファータは返ってくる答えが分かりきった問いを投げかけた。
「すまないが、分からない。アイツは……、いや、彼はオレに名を名乗ってはくれなかった」
「何故?」
「『いずれ、それを持つに相応しい担い手になった時、嫌でもお前はオレの名を知る』……そう言っていた。そちらからの質問の途中にすまないが、そいつに心当たりはないか?」
「特徴は?」
「男でオレと似たような髪型、色は白。服装もほぼ同じだ。性格は……見下す様なタイプではなかったが、やかましい、オレよりも少し背が低い生意気なチビだった」
「そこまで言うのかよ……」
あまりの言いようにチェスターが気の毒そうに溢す。
アインスも、自分でもそう思うが……とは思いはするものの、覚えている限り、もの知らずだった自分の性格がこうなったのもその男の影響を受けたからであって、これに関しては仕方ない事だと流した。
特徴を聞き終えたファータが全員に「心当たりは?」と聞く。
が、全員思い当たるような人物は一人を除いていないらしく、首を振るだけだった。
ロジャー、クラークを除いて………。
「似たような性格ならチェスターなんだけどな。だけどよ……」
「そうなんだよねぇ。すこーしばかり背も小さいのも合ってる。後は該当するとなると、知り合いじゃないけど敵の沢山の魔族くらい」
「テメェら、人をなんだと思ってんだ!第一、オレぁチビでもねえよ!!」
魔族と同列に扱われた事でロジャー、クラークに激昂するチェスター。そして、同じ事を思っていたらしいセラ、アラン、ファータはそんな彼からそっと目を反らし、申し訳なさそうに静かに苦笑した。




