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第19話「四魔将、集結」


エンデのいる階層を去りながら、四魔将のリーダー、仮面の悪魔、シュトレッケバインは背後を振り返る事なく、感情のない声を投げかけた。


「処刑者はどうだった?」

「本気ではなかったが……、悪くねえ。アレなら俺らともやり合える。今からやるのが楽しみだ」

「持っていたのは?」

「『爪』と『翼膜』」

「……竜帝か」

「ファルゼアの小僧とは大違いだ。しっかりと剥き出しのまま使ってるんだからよ」

「見誤るな。アレは『口』と『翅』、性質を一つに纏めた唯一の武具だ。ふとした拍子に周囲を食い潰す程の脅威を抑え込んでる手練れである事に変わりない。それに……私のいない所であまり事を荒立てるな。今、動きにくくなっては面倒だ」

「ちっ、分かってるよ………」


先程の事を蒸し返され、叱られた子どものようにバアルはそっぽを向いた。

バルバトスは特に反応を示さず、リャナンシーはくすくすと笑ったところでバアルに睨まれた。


「とはいえ………だ」

「……………ん?」

「お前の不満は理解している。今後同じ事が起きても困るし、元はといえば私がお前達に曖昧な指示を出していたのが原因だ。故に………」


塔の出口。そこで止まるとシュトレッケバインは振り返る。


「今、一つだけ答えよう。不満、疑問があるのはバアルだけではない………そうだろう?バルバトス」

「………恐れながら」


話を振られたバルバトスは、気まずさを表情に滲ませてそう答えた。やはり、読まれていたかという反応だ。


「よい、今はこのザマだ。そう思われても仕方のない事ではある」

「なら聞くがよ大将。今の腑抜けザマはなんだ?アンタの言う《《あれだけの事をしておいて、どうして破壊の限りを尽くさねえ、どうしてあんなモノに従ってやがる》》」

「………バアルッ!」

「いいと言った、バルバトス。それはお前も感じている事だろう?」

「それは…………、」


バアルの言いように激するバルバトスを、シュトレッケバインは特に気にした様子もなく宥めた。


彼らの思う通り、これが同じ立場なら自分でもそう思うだろう。だからこそ………


「――――これは、戯れだ」


仮面の死神(シュトレッケバイン)は感情を乗せた声で答えた。


かつて聞き慣れた狂気を孕ませた声で――――。


しかし、その一言だけ。シュトレッケバインの纏わりつくような死の気配の昂りはすぐに静かな物へと変わる。


バアル、バルバトスは一瞬だけ驚きを見せると同時に、確信した。


「この男は再び、世界に叛旗を翻す」


それだけで十分であると、二人の悪魔は笑う。


「――――ハッ、詫びるぜ大将。アンタは何も変わっちゃいねえ。何を隠してるかは皆目見当が付かねえが、牙も爪も鋭でぇままだ。好きに()を使え」

「私は変わらず。貴方が臨むのであれば、この盲目は眼前の敵を引き裂き、貫くまで」


一瞬のみ見せた狂気。

それが翳りの一つすら無いとなれば彼らにとって抱いた疑問など些細な物なのだった。


そして、シュトレッケバインはもう一人に問いかける。


「お前はどうだ、リャナンシー」

「無いわよ。貴方に付いていけば、また彼に会えるのだから」


そう、リャナンシーは頬を染めて微笑む。

愛を求め、杯の幻に堕として虜とする妖精、リャナンシー。


明確に目的(ゴール)が違い、おかしな方向に暴走しがちな女ではあるが、今回は処刑者という目印がある。

ある程度は問題ない。それに、もし良からぬ方へと暴走するのであれば、その時に止めればいい。


「バアル、バルバトス、リャナンシー」


配下の名を呼び、シュトレッケバインは改めて命令を下す。


3人の配下はそれぞれ、違った反応でその声に応えた。

リャナンシーは聞いてはいるものの特に反応は示さず。バアルは不敵に微笑み、バルバトスは跪礼を。


「これより、我ら四魔将は本格的に行動を開始する。いずれ攻め込んでくる処刑者との戦いに備えよ」


そう、号令した。時は動き、開幕のベルが響いた――。

仮面の裏、その表情を覗かせないまま。



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