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第18話「狂神と四魔将」


中央都市アンファング。その中枢に建てられた塔、ゾイレブルク。

目の前の男へ、この塔の主である者へバアルは先程までの事を淡々と報告した。


「レジスタンスは一度追い詰めたものの、そのタイミングで処刑者が乱入。リーズィヒ級含め、独断先行したリャナンシーの部隊が壊滅。そのリャナンシーが殺される前にオレが出向いて救助、撤退した。以上がドライマウアーでの出来事だ」

「…………ふん」


自身への敬意すらまるで見せない口調に、バアルの目の前に座る男、このフィラトルを支配する狂神エンデは気を悪くしたように鼻を鳴らした。


しかし、それも一瞬。エンデは薄い笑みを浮かべる。


「たかだか人間相手に随分なやられようだな、犬ども。ドライマウアーは崩壊、試験運用として任せたリーズィヒ級一機を駄目にした挙げ句、みすみす逃げ帰ってくるとは。四魔将(フィア・デモン)が聞いて呆れる」

「…………………っ」

「否定はしねえよ。まあ、玉座でふんぞり返ってるだけの野郎に言われるのは癪だがな」

「ほう?」

「よせ、バアル」


リャナンシーが歯噛みし黙る中、挑発に挑発で返すバアルを、同じくこの場に集まっているもう一人の男が落ち着いた声で止めた。


『殲滅者たち』の軍服に身を包み、両の眼を包帯状の眼帯で閉ざした男………、四魔将の一人、バルバトスだ。

顔の片側半分を覆う髪と、眼帯で表情の殆どが隠れた顔がバアル達の方を向いている。


「いい子ちゃん気取りか、バルバトス」

「そうではない。仮にも()()()だ。感情に任せて無礼を働くような真似をするなと言っている」

「ハッ、そこから気に入らねえんだ!何だって大将はこんな奴に従ってんだよ、こんな()()()()()によ!!」


出来損ない……、その言葉で部屋の空気が重たく伸し掛かるような物へと変化した。リャナンシーは急いで二人から離れ、バルバトスは結局こうなるのかと溜め息を吐いた。


そして、出来損ないと呼ばれたエンデは凶悪な笑みを貼り付ける。


「……吠えたな、有象無象。余程、その命がいらぬと見える」

「事実を言ってやったまで、だ。それによ、出来ると思うか?」


怒りに呼応する様に、エンデの纏う神力の密度が増し、その手に光が収束した。

そして、バアルもその両手に槍と、棍棒を構え対峙する。


そんなバアルに、バルバトスはホルスターから銃を抜き放ち、突きつけた。しかし、バアルもエンデも構うことなくお互いを探り合う。その時だった。


「そこまでだ、バアル」


「―――――――っ!?」

「―――――ほう」


バアルともエンデとも違う、くぐもった声が2人の間から響く。


目の前の光景にエンデは収束させた光を解除し、バアルは武器を構えたまま、音もなく首筋に突きつけられた大鎌の刃に動きを止めた。


――――――動けば、首が跳ねる。


バアルは大鎌を構える者の方へゆっくりと視線を移す。


いつの間にか、その者は目の前に佇んでいた。気配など欠片も感じなかった。

真っ黒な朽ちた外套で頭部も身体も隠し、外套のフードの奥、ひび割れ、無機質な仮面をした顔がバアルを見据える。


「………大将」

「問題を起こすな、そう言っておいた筈だが」

「………聞けねえな」

「そうか」


仮面の下から再びくぐもった声がバアルを諌める。

が、普段ならすぐに聞く言葉を、バアルは拒絶した。外套の者もそれに短く返す。


その直後、身体をぺしゃんこにしかねない程の力の圧がバアルを襲った。


「がっ、は…………!」

()()()()()()()()()()()()()()()

「……っ!…………!!」

「どうした、返事が無いぞ?」

「…………すま、ねえ……っ、大…………将」


力の圧に耐えきれず、その場で潰れた蛙のように倒れ伏すバアル。


その言葉を聞いて、外套の者は向けていた力を解除。手にした大鎌は影のように外套の内側へと消えていった。


「部下の非礼を詫びよう」

「次はない。躾のない駄犬にキツく言っておけ」


バアルとは違う、情のない……事務的なやり取り。


毒気を抜かれたエンデは完全に戦う気が失せ、部屋全体にまで広がり、軋ませ続けていた神力も霧散させる。

最早バアルからは興味を無くし、目の前の存在に任せていた事を聞く。


「例の件はどうなっている?」

「完成度は八十%。今のペースならば、あと二週間程度で完成する」

「ク……ッ、そうか。侮っていたが、奴隷(人間)どももよくやるものだ」


玉座に座り直したエンデは不穏な言葉を吐き、愉快げに頬を歪ませた。





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