第13話「車椅子の老爺」
ハウンド・ソード作戦司令室
アランは中央都市『アンファング』の防壁破壊作戦で起きた事を簡潔に報告した。
アラン、ロジャーの生還、処刑者との遭遇で緩みかけた空気がまた重くなる。
「参ったね、結果的にドライマウアーを破壊出来たのはいいけど………。リーズィヒ級だったっけ?そのデカブツ。ジェネラル級ですらやっと倒せるっていうのに、そんなのが出てくるとは……。アラン、ロジャー。レジスタンス総出で挑んでどうにかなりそうかい?」
クラークの問いに少し考えて、2人は頭を振る。
「無理だと思う。持ち込んだ装備の関係もあるけど、殆ど攻撃が効いた様子はなかった。精々、足止めが限度かな。あくまで、現時点では、だけど」
「…………徹甲弾とかでどうにかなんねえのか?」
「何発いるんだよ。装甲ぶち抜く頃には先に俺達が踏み潰されておしまいだって」
セラのお説教でテンションの下がった問いにはロジャーが答える。
これには直接見たアランも同意だった。
アレはあの魔族の部隊長の話を聞いている感じだと試作機で、恐らくは量産される。
対策を練るべきではあるが、現行の装備でどうにかなるとは思えないのが本音だ。
「だよな………。わりぃ、さっきはバカみたいな難癖つけてよ」
「別にいいよ。話を戻すけど、危うくやられそうだったところを――――」
「処刑者が助けてくれた、って訳ね」
セラからの確認にアランとロジャーが同時に頷いた。
「処刑者…………、話には聞いていたけどそいつで間違いないのかい?」
「確実にそうだと思う。というか、あんな戦い方、誰にも出来ない」
アランは取り敢えず、見たままの事を全員に話した。
真っ黒い闇を撃ち出してリーズィヒ級を破壊した事、無数の黒い杭を用いて敵を串刺しにしていった事。
その後、あの竜に乗せられて救助された事を。
「………マジで?」
「ああ、マジだ」
「処刑者とはまったく関係ない別の何かじゃねえのか?」
「けど、襲われた連中が処刑者って言ってんだぞ」
「だからってよ……」
「ロスト・マギア………」
セラが半信半疑な表情である単語を呟き、チェスターが胡散臭いものを見るような目を、隣にいるクラークに投げかけた。クラークも口には出さないが表情を見るに同じ気持ちらしい。
ただ、これは仕方ないとも言える。
3人が疑う理由は、間違いなく処刑者の攻撃手段に対してだろう。
黒い闇を操り、変幻自在な攻撃による鏖殺。魔族ならばともかく、人間では不可能だ。
現場で見た2人も目を疑ったし、気持ちは分かる。だが、同時に事実でもある事は確か。
どう説明、納得してもらうか………と頭を悩ませていると、作戦司令室に車輪の音と共に老爺の声が響く。
「間違いないだろう、処刑者だ」
「ファータ…………」
声のした方を見て、セラはその人物の名を呼んだ。
そこには車椅子に身体を預けた、鋭い目つきの老人がいた。
ファータ。アラン達、レジスタンスの面々やエリア・ロストに存在する民間人はハウンド・ソードの創設者である彼を皆そう呼んでいる。
セラが近年、司令官として活動するようになってからは身を引いているが、それまでは彼が作戦の指揮をしていたのだ。
黒い革手袋を嵌めた手で車輪を動かしながら此方へと移動してきていた為、クラークはファータの方へ向かう。
「ボス、移動するなら言ってくれれば――――」
「いや、いい。それよりも……セラ」
「ええ、分かってる」
車椅子を押そうとするクラークを手で制し、セラへと言葉を投げかけた。
その様子を見ていたアラン、ロジャーはそれが何を意味するかを察し、セラからの言葉を待つ。
「アラン、ロジャー。帰還してすぐで申し訳ないのだけど、次の作戦に移ってもらいます。いいわね?」




