第4話 メッセージ
「……はあ」
ベッドに仰向けになり、腕で目を覆う。
今日は最悪だった。
身バレ。
連絡先交換。
強制イベント発生。
「……なんで俺の連絡先なんか知りたがったんだよ」
夜桜紫苑の意図が読めない。
まさか、本当に変なことに使う気じゃ──
ピコン。
タイミングよくスマホが鳴る。
『早速メッセージしてみたよ。どうかなアージェント君』
(来た……)
しかもドヤ顔スタンプ付き。腹立つ。
『どうもしない。用がないなら送ってくるな』
即返信。
すると、間髪入れずに既読。
『今日このあと一緒にゲームしよ?』
早すぎるだろ。
『なんでだよ。またPKする気か?』
『もうしないよ。だって嬉しくないんでしょ?』
(当たり前だろ)
『私は君の喜ぶ顔が見たいな』
「……は?」
意味が分からない。
『謝るからさ。一緒に遊ぼ?』
『断る。二度と関わるな』
『盗撮って言いふらすよ? 朔夜君』
『……クソが』
『やったー。じゃあ1時間後、はじまりの都の酒場で集合ね』
スタンプ連打。
画面がドヤ顔で埋まる。
「……はあ」
選択肢は、ない。
「……ログインするか」
ここで拒否すれば、現実が終わる。
(マジで最悪だ……)
――――
ミラーアースオンライン。
はじまりの都、酒場。
「あ、ちゃんと来たね」
「来るしかねえだろ」
「人聞き悪いなあ」
「悪いのはお前だ」
いつも通りの悪魔アバター。
「それよりその見た目、どこで手に入れた」
「初回限定版の特典だよ」
「……よく手に入れたな」
ほとんどのプレイヤーが逃したレベルだ。
「実力かな」
「うぜえ」
――――
「で、何するんだよ」
「……あ」
「忘れてたのかよ」
「アージェント君と話してるの楽しくて」
「……は?」
意味が分からない。
(こいつ、本当に何考えてるんだ……)
「じゃあレアクエスト行こっか」
「……まあいい」
――――
レアクエスト
『天より舞い降りる竜退治』
星6以上の高難度クエスト。
条件を満たした者のみ受注可能。
「報酬、剣と秘薬だって」
「悩むな……」
「じゃあ両方あげる」
「は?」
「誕生日プレゼント」
「……なんで知ってる」
空気が一瞬で変わる。
「常識だよ」
「ふざけんな」
(なんでだ……?)
知ってる人間は限られてる。
「ねえ、大丈夫?」
「……どうやって調べた」
「私にかかれば全部分かるよ」
「怖えよ」
親指立ててウインク。
悪魔の見た目でやるな。
――――
「まあいいや。両方あげるよ」
「いらねえよ。裏があるだろ」
「ひどいなあ」
「お前を何だと思ってるか言ってやろうか?」
「聞いてみたい」
「最上級の悪魔」
「私、乙女なんだけど?」
「知らねえ」
「処女だよ?」
「もっと知らねえ」
「アージェント君も童貞でしょ?」
「死ね」
――――
「ねえ、パーティー組も?」
「……まあいい」
「え、いいの?」
「お前が言ったんだろ」
「やったー」
本当に嬉しそうな声。
(……なんなんだよ)
「一時的だからな」
「えー、ずっとでいいじゃん。夫婦みたいで」
「ふざけんな」
「家事もできるよ?」
「いらねえ」
「お背中流してあげても──」
「?」
急に黙る。
そして、照れた仕草。
(……キモ……いや、なんだこれ)
――――
こうして。
俺は、ファントムローズとパーティーを組んだ。
完全に、巻き込まれている。
だが。
これで終わらない。
ここから、さらに面倒なことになる。
まだこの時の俺は知らなかった。




