第15話勉強会
「おい、何で集まって勉強する必要あんだよ」
「朱城君、君は何もわかってないね。三人寄れば文殊の知恵って言うだろ」
「それだと自分が平凡な人間だって認めてるもんだぜ」
「はっ」
レイナに図星を突かれて固まる紫苑。
意外と紫苑は押し負けてるな。
「つーか貴重な日曜日に呼ぶなよな。二人でラブラブしてりゃよかっただろうがよ」
「それは大丈夫だよ。朔夜君とは昨日いっぱいラブラブしたからね」
俺は口に含んでいた飲み物を盛大に吹き出す。
咽せる俺。
「汚いよ朔夜君。急にどうしたのさ」
「ゲホっ、ゴホッ。お前が変なこと言うからだろうが」
「事実だからね。私は嘘は言ってないよ」
ニヤニヤと揶揄うように腹立つ笑顔で煽ってくる。
確かに思い返せば完全には否定できない。
「つーかお前ら付き合ってんの?」
レイナの唐突の質問に俺は固まった。
「付き合ってねえよ。何でそうなる?」
「寧ろ何で付き合ってねえんだよ。普通好きでもない男の家に泊まりになんて来ないだろうが」
至極正論だ。否定はできない。
「それでも付き合ってねえよ。紫苑からも何か言え」
「じゃあ付き合ってるでいいんじゃないかな」
「何がじゃあなのかもわからないし、よくもないだろ」
「ううっ、酷いよ朔夜君」
揶揄うように泣き真似をする紫苑。
それを見て大きく呆れるレイナ。
「付き合ってらんねえ。勉強始めるぞ」
レイナの圧力により、俺と紫苑は教科書とノートを開く。
暫く無言でシャーペンの音だけが聞こえる。
「なあレイナ。ここどう解くんだっけ」
「あーここは三角関数の問題で、加法定理を使って」
「なるほど。お前意外と頭いいんだな」
「白銀、教えてもらっておいてそれは失礼だろうが」
「悪い。意外だったもんで」
レイナはどうやらめちゃくちゃ勉強できるようだ。
恐らく運動神経も抜群だろう。
見た目に反して、凄く優秀だ。
「朔夜君酷いよ。私の目の前で浮気なんて」
「浮気って目の前で見せつけるものじゃなくね」
「浮気は否定しないんだね」
「何で俺が悪いみたいになってんだ」
揶揄ってるのか本気なのか今一わからねえ。
そもそも俺の事が好きなのは確実なのか?
(だが好きでもない男の家に泊まりになんて来ないよな⋯⋯ ?)
「悪い俺席外す」
「トイレかな」
「一々言わなくていいんだよ」
俺は呆れつつ、部屋を出る。
────
レイナside
「なあ、そもそも白銀のどこがそんなに気に入ってんだ?」
「直球だね」
私は興味本位で聞いてみたくなった。
何せこいつの白銀に関する執着は異常だ。
短い付き合いだが、それでも異常性を感じ取れる。
「別に答えたくなかったら答えなくてもいいぜ」
「答えたくないわけではないんだよ。でも改めて言われると言語化に苦しむね」
「好きではあるんだろ?」
「まあね。朔夜君の事は全て知りたいし、彼の幸せが私の幸せだよ」
「それが全てじゃねえのか?」
今の受け答えを見るに、好意があるのは確定だ。
だが、何か普通の好意とは違う違和感を覚える。
「もしかしてお前、普通を知らないのか?」
「知らないかもね。知ろうともしなかったけど」
なるほどな。だから距離感がバグってたり、ストーカー紛いの行為をしてたのか。
「じゃあもし、私が白銀を好きになったらどうするよ」
「え?」
一瞬固まる夜桜紫苑。
不意をつかれたのか思考停止する。
「それは仮の質問なのかな?」
「さあどうだろうな」
「邪魔だね。排除しないとね」
「物騒だな」
まあでも普通を知らない事がメリットにもなる。
少なくとも譲って諦める選択肢はこいつには存在しない。
「白銀に好きって事伝えたのか?」
「毎日必死にアピールしてるよ」
「まあ、そうだよな」
何を言ってるのと言わんばかりに首を傾げる夜桜紫苑。
こりゃ白銀は大変だな。
「でも白銀って意外とモテそうだよな」
「そうだね。悪い虫が付きやすいよね」
「さっきから発想が物騒すぎるぞ」
つーか、何で私巻き込まれてんだろうな。
白銀もよく相談してきやがるし。
「ふぁあ。帰りてえ」
小さくそう呟く。
それと同時に白銀が戻ってきた。
────
「何話してたんだよ?」
「女子だけの秘密だよ」
「え? お前らそんな仲良かったっけ?」
「酷いよ。私にも親友くらいいるよ」
紫苑の親友呼びにレイナは嫌そうな顔を見せる。
「そう言えば屋上って毎日使ってるのか?」
「最近は昼休みはね」
「私も使っていいか? 邪魔しねえからよ」
「いいけど。ってか何の邪魔だよ。何もねえよ」
俺の言葉にわざとらしく落ち込みを見せる紫苑。
この女めんどくせぇ。
「最近クラスの連中に捕まりっぱなしでよ。全然一人になれねえんだわ」
「お前そんなに一人が好きなのか?」
「当たり前だろ。一人ほど気楽なものもねえよ」
まあ確かに。否定はしない。
俺も一人好きだし。
「あっ、そろそろ帰るわ」
「門限厳しいのか?」
「まあな。家うるせえからな。ピアスだって外してから帰ってる」
「それは大変だな」
「だろ。唯一救いなのがこの髪色が地毛だから、何も言われねえくらいだ」
「え!? 地毛だったのか?」
てっきり染めたものだと。
「あー言ってなかったっけ。これママの家系の髪色で」
紫苑が唐突にニヤニヤと笑う。
「朱城君。ママ呼びなんだね。可愛いね」
「つっ──うるせえ。いいだろうがよ。お前だってどうせママ呼びだろうが」
「失敬だな。私は母君と呼んでるよ」
嘘つけ。どこの平安貴族だ。
「まあ冗談だけどね」
レイナが再び時計を見て、慌てて帰り支度をする。
「くだらねえ事話してる場合じゃねえ。まじで帰るわ」
「ああ。今日はありがとな」
「別にいいよ。わりかし楽しかったしな」
丁寧に紫乃さんに挨拶をして帰っていく。
「じゃあ朔夜君。続きやろうか」
「今日は泊まれないぞ」
「チッ」
こいつ舌打ちしやがった。
しかも泊まる気でいたのかよ。
恐ろしすぎる。




