第8章 003 英雄であり魔王であり
玉座の前で再びあぐらをかいてデッキを広げる大和。また大和の手元にはクライカードがあった。じっくり一人で考える。
……やはり俺が魔王になるしかない。
魔王になればここにいるみんな消えなくて済む。天涯孤独のつらい元の現実に戻されることもない。尻尾を振りながらリーリが寄ってきてご機嫌よさそうにあぐらをかく大和に背中から優しく抱きしめる。
「あたしたちのことまで考えてくれているのー? いやーだ。ちょーうれしい!」
「みんないろんな事情があると思うから。君もね」
「あーやだ。惚れちゃう。社員を想う新社長さんみたいな感じ」
社長だったらどんなに良かったことか。
デッキを組み直す大和にホエールも近づいてきた。
「魔王になるの?」
「魔王に、……なるのかな?」
魔王になるとすればクライカードとも関わらないわけにもいかないかもしれない。現状の王国との関係を思えば、できるならば使わないことが好ましい。
もし大和がクライカードを使う立場になるようであれば、人間たちがクライカードを作らなくなった時、今度こそ王国から狙われる立場になるだろう。
クライカードは悪魔の力によって実体化する。セイントカードは神聖な力、女神や聖女、そして天使の力だろう。
クライカードのために悪魔を作ったのかそれとも。……いや違う。
「転生する際に役職が悪魔になってしまった者がいるんだ」
理解が追いついた大和は気づいた。だとしたら悪魔の存在意義のためにクライカードが作られたんだ。悪魔は人間にとって不利益で健康にもよくない影響を与える。
突如目頭が熱くなり手で拭うと赤い血が指にねっとりと付着した。
クライカードを手に取ってリーリが近くにいる影響か。
「クライカード関係ないとか言ったけど。……実際違うようだな、悪影響はある。にしてもこれは困った状況だ」
ホエールは心配して「大丈夫?」と聞いてくる。
「大丈夫だよ。ありがとうホエール」
ホエールも砂クジラの群れから追い出された存在だ。彼女の今の居場所はここしかない。みんな消えたらまた独りぼっちになってしまう。そんなことにならないためにも何とかしなければならない。




