第8章 001 英雄であり魔王であり
魔王城の謁見の間の玉座に座る倉間大和。彼は今思い出していた。クライカードは元々幸福に困窮している者が使う証明として機能していた。そして救わなくてはいけない象徴として機能していた。
そのカードを魔王も使っていた。そして今は大和も使っている。
魔王城へと客人がやってきた。女神フリイヤと戦闘の神トオルである。久しぶりの女神の顔を見て安心感を覚える大和だった。
「……フリイヤ」
「久しぶりね、大和」
フリイヤとトオルは大和を救いに来たのだった。
「あなたの今の現状。つらいことでしょう。今から私たちは王国へ行って貴族たちと話をつけてきます。クライカードを作り続けること、そして権限の独占のため攻撃を仕掛けること。大和、あなたの貴族反逆の国家転覆の罪のことも。話し合いの実現のためにもあなたにはクライカードを使用することを制限します。いいですね大和。もうクライカードを使わないでください」
玉座の裏にいた女悪魔リーリが現れ「えーつまんなーい」と声をあげる。
「分かっていると思いますが、クライカードは悪魔の力です。その悪魔に魅入られているのもクライカードをあなたが使うからです。使わなくなれば自然と放れていくでしょう」
大和は首を縦に振る。
「分かった。ありがとう。助けに来てくれて」
大和は女神フレイヤから洗礼を受け光を浴び浄化されるのだった。
〇
馬車で王国へと向かうフリイヤとトオルの出発を魔王城から大和とタートルとホエールは見守った。
大和は一人呟く。
「みんなで冒険していた時は楽しかったな」
一人思い出に浸る彼にタートルも「そうですね」と言う。
「タートル。俺は魔王じゃない。敬語じゃなくていい。逆に困る」
「そうかもしれないな」
「タートル。魔王はずっと一人で俺が感じた苦しみを背負っていたのかもしれないな」
「魔王様は一人で背負いすぎる方だったから」
見送りが終わると大和は玉座の前であぐらをかいて座りデッキのカードを広げた。その様子を観察している女悪魔リーリが「えークライカード取っちゃうの? 寂しいー」と嘆く。
「お前が神聖な力に変われたならきっとまたご縁があるさ」
「それは遠慮しておきます」
リーリは神聖な力を持つ者に転生するのはごめんのようだ。
王国とのやり取りも神界の神々が対応してくれているようでなんとかなりそうだ。大和もクライカードを手放しこれで一件落着だ。
リーリは大和に問う。
「そんなに簡単にうまくいくと思っているの? 人間の欲とはそんな簡単なものじゃないと思うけど」
「フリイヤの洗礼を受ければ誰だってクライカードの執着はなくなるさ」
「ふーん」




