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第6章 001 魔王の城

 砂クジラの少女ホエールが仲間に加わったのはつい最近のことだが、魔王の城の近くまですでにやってきていた。

 石造りの城が少し離れたところからでも確認できる。


 魔王の配下であるタートルがいれば魔王のところまですんなり行けるという。まるで客人をもてなすかのようだ。


 倉間大和は勇者となるために異世界グランドジービアへとやってきた。魔王と戦うためだ。話し合いで済むならば勇者なんていらないのかもしれないと魔王の城に向かいながら覚悟を決める。

 女神フリイヤにも言われているように魔王は世界を救わなくてはいけない理由を作っている。それを止めなければいけない。


      〇


 巨大な城門の前に立つ大和とフリイヤとタートルとホエール。

 タートルは目を瞑り何かをぶつぶつ唱えると城門が開いた。


 城門の内側にはドラゴンの尻尾を生やしたメイドが立っており「ようこそおいでくださいました」とあいさつをした。後ろには黒騎士たちも並んでいる。


「魔王様と謁見を」


 タートルによってスムーズに魔王に会うことができる。そういう手筈だった。

 メイドに促されるように大和たちは魔王がいる謁見の間へとたどり着いた。魔王は鎧に身を包み巨大な角が生えておりどっしりと重そうな体を玉座に預けている。周りには尻尾を生やした悪魔メイドや黒騎士たちが立っていた。


「タートルご苦労だったな」


 頭を下げるタートル。


「そしてそこにいる青年が勇者というわけか……」


 勇者として頭を下げずに白い召喚板を構えて「あなたを倒しに来ました」と伝える。


「クライカードのせいで世界全体でみんな悲しい思いをしています。できることならば今すぐクライカードを作るのも配るのも止めてください」


「君はクライカードのせいだというんだね?」


「そうです」


 魔王は「そうかそうか」と呟く。そしてさらに小さな声で「懐かしいな」と呟いた。


「では君は救いが必要な者をどうやって探す? 普通に生きているように見えたとしても心の闇は表に出ない限りは見えないのだ。クライカードはその証明となるのだ」


「でもそれが次の悲しみを生みます」


 タートルとのやり取りのように話が噛み合わない部分がある。


「では質問です魔王よ。あなたはどうやって救っているのですか? クライカードを使っている者がいたとしてどうやって救っているのですか?」


 魔王はどっしりと構えたまま答える。


「我が救ったのはそこにいるタートルもその一人。ここで働く悪魔のメイドたちもその通りだ。元は皆孤独だった人だ。人はなあ。居場所がないと生きていけないのだ。何かしらの理由で天涯孤独な者はたくさんいる。それを救うことが勇者にはできるのか?」


 できるわけがない。カードゲームが得意で選ばれた勇者。ただそれだけの話なのだから。


「人はもっと強く生きていける。きっと」


 魔王は首を横に振った。


「それは鬼の意思だ。つらいままで生きていけという鬼の意思となる」


 ここで女神フリイヤが口を挟む。


「鬼はどっちよ。クライカードを使う人が増えて増えたらそのままのあなたが何を語れるの?」


 深く息を吸い、ゆっくりと吐く動作をして大和は覚悟を決めた。


「デュエルだ。魔王よ」

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