第5章 004 砂クジラの少女
自由になった砂クジラは空を自由自在に泳ぐ。すると同時にいたるところから砂クジラが現れ喜んでいるように低いうなり声のような音を発し空を泳ぎ回った。そして少女の姿も小さな砂クジラとなり泳ぎ混じろうとする。
だがなんだろうか。少女の砂クジラだけはぶられているような気がしてならなかった。
みんなでお祝いするように自由に泳いでいるのに何故か少女の砂クジラだけ混ざることを拒否されているようだ。
フリイヤは言った。
「砂クジラの習性よ。一度人間に捕まった個体は群れの弱体化を恐れられてなかなか群れに戻ることができないの」
だが不思議なのは捕まりそうだった個体は自由に自在に泳ぎ群れの一部として喜んでいるように見える。
「あの砂クジラの個体は捕まりそうだったけど、逃げ出せた。タートルのおかげだけど、ピンチから逃げ出せることがそもそも強さを証明することにもなっているようね」
大和はタートルを見て不思議に思う。
「タートル。お前っていったい何者なんだ?」
タートルは空を自由自在に泳ぐ砂クジラの群れを眺めながら答えた。
「前に言ったよ。魔王様は悪魔だけじゃなく、天使をも生み出すって」
タートル・アールは、魔王によって転生を受けた天使であった。
〇
タートルの過去は孤児であり小さい頃に母親や父親を失っている。そんな彼女に魔王が生きる力を与えてくれた。天使としての力を得て転生したのだった。
そもそもがクライカードというもの自体が生きることが困難な者としての証明として機能しており、そんな者を見守り導くために機能していた。悪魔の力をなんの困難もない者が欲しがるはずがないからだ。
天使であるタートルがクライカードを使っていたのは困っている者と同じ境遇を再現するためで、苦労して逃げ道もなくどうしようもない者が警戒しないで近づけるようにという目的があった。
そしてそんなつらい世の中を変えようと現れる勇者は魔王の騎士として相応しいのではないかというのがタートルの見方である。




