第27章 007 魔王ライオウ 後編
工場長は黒のポロシャツに黒いスカートを履いた女性を連れてきた。三十代くらいの女性だ。大和は「あなたが魔女ですか?」と問うと女性は「そうです」と答えて己の名を述べた。
「私はラム・エルムと申します。そちらは? 今回はどんな御用で来られたのでしょうか」
大和たちはそれぞれ自己紹介をしデビルカードの生産を止めるように言った。
ラムはうーんと小さく唸り声を上げて「それは無理でしょう」と言い出した。
「何故? 何故無理なのです? たくさんそれで苦しんでいる人がいるのですよ?」
ラムはデビルカードが必要な理由を述べた。
「デビルカードは心の弱い人を発見するために必要なのです」
その言い分だけだとクライカードやダークネスカードが必要な理由と同じだ。
「心の弱い人を分かりやすくし、近づかないようにするためです」
大和は呆気にとられた。
「今、なんて言った?」
「心の弱い人に近づかないようにするために必要なのです。心の弱い人は危険なのです。彼らは親を失ったり恋が実らなかったり、貧乏だったり、勉強や仕事がうまくいかなかったりすると、何かで勝ちたいと思うようになります。そこでカードゲームの出番となります。最初はセイントカードを使うかもしれませんが、勝ちたい気持ちが強くなればなるほど勝つための手段に移っていきます。そんな者たちはやがてデビルカードにたどり着きます」
「何故心の弱い人が危険なんだ? 辛いことがあるからこそ皆で乗り越えないとならないんじゃないか!」
「そうですか? 皆で乗り越えるとはどういう意味でしょう。辛い者と辛くない者とで一緒にいられますか? 私は不可能だと判断しました。他者より上にいきたい。他者より先にいきたい。そんな飢えがデビルカードを使わせるのです」
「でもそれを作っているのはあんたらじゃないか!」
「そうかもしれません。でもデビルカードがなければそんな者たちを判別することができませんでした」
大和は思った。クライカードやダークネスカードが作られていた理由と真逆の理由でデビルカードが作られていると。
「なんでそんなに冷たいんだ? 王都もそうだ。人が倒れているのに放置している。この国は狂っているよ!」
「あなたは何故そんなにも人の世話を焼きたいのですか?」
考えたこともない疑問を投げかけられ大和は一瞬言葉を失う。
「……世話を焼くだって? 皆一人では生きていけないじゃないか。だから助け合わないといけないんじゃないか。あなたの言っていることには愛がない」
「いいえ、愛ならあるわ。他人より上へいきたい、他人より先へいきたい、そんな飢えを持っている者たちとは距離をとる。それが愛」
「愛?」
「そう、愛。気づくように促す愛よ。生き方はいつだって変えられる」




