第3章 001 謎の少女
悪魔憑きの黒騎士はカードゲームに敗北したことによって女神フリイヤの洗礼の光を浴び、黒い召喚板やクライカードのデッキを手放した。勝負が終わってからしばらく放心状態だったが、ヘルメットを外し自らの顔を露わにした。
女神フリイヤは洗礼の光を浴びせながら鎧の下の素顔にご満悦だった。
「おっイケメンね」
「イケメンかよ」
さらに耳のとんがりを見るからにエルフであった。
大和はどことなく突っ込みを入れて「もう心配いらねえな。顔もいいことだし」と言って敗者に対して心のケアになる言葉をかける。だが疑問は残る。
「にしてもあんたどこの配属の騎士なんだ?」
真っ黒い鎧に包まれた騎士の配属が気になる大和。それもそのはず騎士たる者が麻薬ではないが、法律で裁けない違法なカードゲームに手を染めていたのだ。鎧を身に着ける身分ということは国を守る立場なはずだ。少年の声で見た目もハンサムで年齢的にも十代というところだろうか。
「どこで手に入れたんだ? カードやら召喚板やら」
「魔王様から頂戴しました。僕は魔王様の騎士なので」
女神フリイヤが手に抱える黒い召喚板とデッキに目をやり大和は「君の名前と年齢は?」と質問する。
「僕はタートル・アール。17歳。魔王様の騎士たるエルフだ」
「君は俺にクライカードを見せて勝負を仕掛けてきたな?」
「勇者たる者なのだ、僕と同じく魔王様の騎士に相応しいと思った。世のため人のために健全たる力を使い女神にも魅入られる存在。魔王様は卑怯なものや卑劣なものが嫌いだ。だから相応しいと思った」
この話を聞いて女神フリイヤは不服な表情だ。
「でもだったらなぜ悪魔の力なんて遠回しに自己破滅する力を与えるの? あなたにも。愛がある選択とは思えないけど」
「僕は孤児からの騎士上がりだから。こねもないのさ。友達もいない。だからこういっちゃなんだけど、僕には失うものが何もない。だから悪魔の力でも僕としたら大した問題じゃないさ」
個人の人生観だが、それを認めるわけにはいかない。大和はタートルの肩を優しく掴んで正面から向かい合った。
「つまり、魔王様はそんな君を認めてくれたと?」
「存在していることを認知してくれる。そんな魔王様のところで働かせてもらえることが僕にはとても嬉しかった。これはまさに愛だ」
誰も自分を必要としないから真面目に生きてもしょうがないというように大和には聞こえた。確かに誰にも必要とされないのはずっとそれを実感し続けるのは苦しいことだ。だが、そこからどうやって人生を見る視点を変えていくかという難題が大事なのではないか。大和はそう思った。




