第17章 006 魔王の苦悩
アルケムは頭を下げたまま答える。
「はい、魔王様と同盟を結びたく参りました」
その同盟の内容というのが、ダークネスカードの普及についてだった。
イーネイも頭を下げたまま話す。
「ダークネスカードを広める手伝いをしていただきたいのです」
大和は堂々と返答する。
「いやだと言ったら?」
アルケムは頭を上げて問う。
「それはあなたが英雄の倉間大和だからですか?」
大和は仮面を外して問いを問いで返す。
「だったらなんだ? 俺を脅すか?」
アルケムは「いいえ」と言って首を横に振るう。
「俺の正体を知っているのは合計5人。リーシェル、ラース、アルケム、イーネイ、オーライ。俺は自分の正体を知られると大変困るんだよ。皆の衆」
オーライは頭を上げて問う。
「では、我々を殺しますか?」
「いいや、そのような無粋な真似はできない。できれば記憶を消させてほしいんだが、了承できるか?」
アルケムはしばらく黙ったままだった。
「我々の記憶を消すことで、我らに何かメリットはございますか?」
「ないな」
〇
今日のところ一旦客人のアルケムとイーネイとオーライは帰っていった。とりあえず自分の正体は誰にも話さないよう忠告した。
だが大和は思った。自分は覚悟するべきなのかもしれないと。自分の正体を隠さず魔王として生きていくということ。きっと人からは嫌われることだろう。
玉座に座ったままフリイヤに問う。
「俺が魔王であることが一般人たちにばれたらどうなると思う?」
「大丈夫です。きっとうまくいきますよ。隠し事があるよりも解放された方がうまくいきやすいです。きっと」
「ありがとう。フリイヤ。そうだったらいいな」
正体がばれたら魔王の座から降りないといけないと思っていたが、堂々としていればよいことなのかもしれない。魔王は嫌われ者で否定される存在だが、自分が存在していることによってタートルたちは元居た世界に帰らなくて済む。彼らは元居た世界では天涯孤独の身である。だからどのみち魔王という座から降りる訳にはいかないのだ。
「どうなっていくか分からないけど。色々と受け入れていく時期が近づいているのかもしれないな」
元はと言えば魔王代理のリーリの口数が多いことから問題に発展していったわけだが、それを声に出してもしょうがないことだ。
〇
大和は玉座に座りながら今までの戦いを思い出していた。今まで戦ってきたクライカード使いとの戦い。自らもクライカードを使ってヴァーリという勇者と戦ったこともある。そしてダークネスカードデッキとの戦い。思い出すと時代の流れを感じる。
「俺は、これからどうなるんだろう……」
フリイヤは大丈夫だと言っていたが、本当にそうだろうかと思う自分がいた。魔王を倒した自分。その贖罪の日が近づいているのではないか。
そんな不安に苛まれていた。




