第17章 003 魔王の苦悩
話し合いの結果、ダークネスカードを使う者たちをリーシェルの魔王城に呼ぶことを邪魔しないように大和は言われた。
だが大人しく首を縦に振るわけにもいかない。
「もしダークネスカードを持っている者が暴走していた場合、その時は手を下させてもらう」
リーシェルとラースはそれは仕方がないことだとし、了承した。
「それと、俺が魔王ということは誰にも言わないでくれ」
大和たちは工場から去った。
この町の宿屋へ泊る手筈を済ませると、大和はタートルと二人だけで話があると言いだした。
二人は宿屋のフロントのソファに腰をかけて話し合いを始める。
「なあ、タートル。俺って魔王のままでいいのかな?」
「何を言い出すと思えば。君がいるから僕らがいる。そうだろ?」
大和は「そうかもしれないが」と言い手を組んで視線を下げた。
「大和は今日あの工場で言われたことを気にしているんだね?」
「……そうかもしれない」
〇
宿屋に宿泊する手筈を済ませると、近くに小さなカードショップがあったためそこのカードショップへ寄った。なんとそこにもあの物はあった。倉間大和のサイン付き犬デッキがショーケースにて飾られている。
大和はため息を吐く。
「俺が魔王を倒したデッキ。そんなに価値のある物じゃないだろうに。どこでも持ち上げられているな……」
現実、今の魔王は大和である。そして魔王を倒した勇者であった過去がある。彼が魔王であることは隠されていて誰も知らない。英雄として祭り上げられているが、自分は英雄なんかじゃないと大和は思っていた。もうすぐリーシェルというもう一人の魔王が現れるだろうが、大和は何もしてはいけない。リーシェルにはリーシェルの目的があり、魔王を目指しているのだろう。だが魔王は倒されるべく存在しているのがこの異世界の常だ。きっと必ず彼を止める者が現れる。そしてクライカードが生産停止されたように、ダークネスカードも生産を停止する日がくるだろう。
魔王を倒したサイン付き犬デッキをショーケース越しに眺めていると、なんだか今の自分は自分らしくないと思うのであった。あの時の自分は何も疑うことなく、使命に対してまっすぐであった。
「俺らしくないな。俺はやるべきことをやるだけだ」
大和は「よし!」と言って、ショーケースやストレージケースを拝見して掘り出し物があれば購入してデッキの強化を図ることにした。




