【85】エコー・シガレット(前)
「ですから!ダメったらダメです!
上手くいくわけないでしょ!そんな無謀なノープラン作戦!ウチのリーダーは頭湧いてんのか!?」
「な。ヤバいだろ。この牛」
「ヤバすぎますよ。よくここまで大きな問題もなくやってこれましたね。
兄上とキアのお陰でしょうけど、この牛イカれてますわ!」
「そんなに言わなくていいじゃない!
何とかなってきたから今回も大丈夫なはずよ」
「バカか!何の作戦もなく全員での力押しのみとか、奇襲のことも考えろ!」
「そこはパワーでゴリ押しよ」
「死ね!クソ牛!お前だけでなく全員の命のことを考えろ!リーダーならばな!」
「ほれみろ。怒られてやんの」
「何も言い返せないわ。ちょっとザハルより頭いいでしょ!あの子」
「当たり前だのクラッカー。俺なんて足下に及ばんよ。医療はマイム。頭脳はエコー。オスクリダドも揃ってきたじゃねーか。やったなロスト。ポンコツ軍団卒業の日は近いぞ」
「お祖父様にザハルさんやキアさん、それに師匠の存在は絶対大きいですよね。マイムさんの医療体制も完璧すぎて今後激しい戦いになったとしても、と思うと心強いです」
「それはつまり初期メンバーの私達がポンコツ軍団と認定されたって事じゃないかしら?」
「あー……えーとそう言ったつもりです」
「はっはっは!ポンコツ軍団認定乙!」
「いいわよポンコツでも!」
「拗ねんなって。ゴスロリ牛さん」
一通り弄ったあとに、アサドが真剣な顔をして提案をしてきた。
「しかし、メンバーを増やすことは真剣に大切なことだよ。
以前戦った古代種のような相手が今後の相手になってくると考えると、俺達の戦力は圧倒的に足りない」
「兄上、その古代種とまた会えたりしませんか?」
「ん?まぁ行けば会えるだろうが……なぜ?まさかお前?」
「そのまさかです。引き入れてしまえばいいんですよ」
「無理だろ!」
アサドが吠える。
「いえ、無理ではありません。繋がりが出来た以上は無縁ではなくなったことの証明ですから」
「貴方は知らないでしょうけど、とんでもなく強く危険なのよ」
ロストが窘める。
「兄上、キアさん、マイムさん。それと私でヴァンパイアの里に行けませんか?」
「行けるよ。行くか?」
「ええ。お願いします。会う必要が絶対にあります」
こうして兄弟とAIとぷにぷにの旅が始まった。
始まったと言っても転移で一瞬なんだけどね。
古のダンジョン───ヴァンパイアの里。
「なるほどここが例の場所ですか」
「何するつもり何だよお前」
「少しお話しを」
「ここの長は頭でっかちだから話なんて聞かねーぞ」
「ふふ。大丈夫ですよ」
目の前から歩いてくる門番。
「ん?お前はザハルではないか。久しいな」
「そうだな。セリーナはいるか?」
「長は中央の棟に居られるぞ。
お?まさか……死合うのか!?」
「しねーよ!何で俺とアイツはバトルがsetになってんだよ!何が、お?だよ!何を期待してんだよあんたらは!」
色々と馬鹿なイベントが発生したが、何はともあれ中央の棟へ着き謁見を申し出る。
案外あっさりと謁見が叶い俺達は通された。
「久しいなザハル」
「そうだな」
「して、隣に居るのは?」
「弟のエコー・シガレットだ。それよりもお前、その話し方やめろよ。似合わんぜ」
「そ、そうか。じ、じゃあやめよう」
セリーナは密かに思った。
(よかったー。引くに引けなくなっていたのよねー)
「兄ザハルより紹介に預かった、エコー・シガレットと申します。
族長セリーナ殿にご挨拶に参った次第」
「ザハルの身内と言う割に礼儀正しいじゃないか」
「失礼じゃない!?」
「当然だろ。お前は1度として敬意を払ったことがないじゃないか」
「当然だろ!いきなり攻撃されて殺されかけたんだから」
「まぁまぁ蒸し返さなくていいじゃないか」
「いや、切り口はお前だし!」
「あ、兄上……申し訳ないのですが少し静かにしてもらえますか?」
「お前まで!?」
「ザハル、僕と外に出ていよう」
「マイム!」
「あのね、これからエコーが大切な話をするんだと思うんだ。
ただその話において、ザハルは今の段階で話を聞くべきじゃないと思うんだよね。
だから行こう。今はエコーに任せて」
「OK。エコー、外に居るから何かあったら呼んでくれ」
「ありがとうございます」
ザハルとマイムが退出したことにより、エコーとセリーナが正面を向き対峙する。
殴り合いの戦いではなく、舌戦が始まる予感。




