2020年x月26日
わたし、喜多条皐月は前世の記憶を持って生まれた。
これが異世界や、過去の世界ならチートで役立ったのかもしれない。
でも、わたしの前世は500年前の人間。役立つことなんて、ちょっと昔の歴史に詳しいかな、くらい。
幼稚園の頃は同じ年の子が知能が低すぎて話が合わず、いつも壁を作っていた。
家では変な子扱いで、双子の姉からも疎まれ、両親も扱いに困ってわたしが十歳になった頃、祖母の所に預けられる事になった。
祖母の毬亞は歴史に詳しくて、旧姓の京極は近江ゆかりの血筋で京都から近い。
わたしも前世はよく京都まで出稼ぎに行っていたものだ。
住まいは山城国(今の京都)の大原だったが。
そして毬亞は、わたしの話の良い話相手になった。
姉や両親のように、頭ごなしにわたしを否定しない。親身になって話を聞いてくれて、歴史知識を絡めて相槌まで打ってくれる。
彼女が本当にわたしの話を信じてくれたのか、それとも信じたフリをしていたのかは今では確かめようがないが、それまで孤独だったわたしの一番の救いになった。
何より、同じくこの時代に転生しているとわたしが確信している婿の事を話すと、
「いつか会えると良いね」
と言ってくれたのだ。
小学生のわたしにとって、それは何より嬉しくて。
毬亞と過ごす時間が、ずっと長く続けば良いと思っていたのだが。




