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転生したら覚恕なんだけどヤかれるのは御免です  作者: 咲原魁里@覚恕転生


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十二、白黒(挿絵追加)

「りばあし、ですか」


「ああ、こんな感じのものだ」

 拙僧は三条儀右衛門にリバーシの設計図を見せる。


 将軍足利義晴と近衛晴子に趣味を作ってあげる件で、折角だし新しい娯楽を作ったらと思いつく。

 要するに白黒をひっくり返して勝敗を決めるゲームのアレだ。簡単に作れて転生物の定番であり、しかも上手く行けば金儲けにもなる。


「ふむ、囲碁の白黒のような物を張り合わせるのですか。しかし……」

 儀右衛門は言い淀む。

 そう言えば儀右衛門は金属職人か、石細工は専門外だったか。


「これ、そもそも白黒である必要がありますので?」

 しかし彼の気になってるのは別の点であった。


 そう言えば考えたこともなかったが、裏表さえ分かれば何も現代と同じ物を作らなくてもいい。

 元々はシェークスピアの劇に登場する肌の違う二人を元に、日本人が考案したゲームだと聞いたことがあるし。


 かくして、この時代にリバーシもどきが爆誕する。

 ちなみにあれは将棋のように駒と呼んでしまいそうだが、囲碁と同じく石と言うのが正しいらしい。

 しかし儀右衛門の作ったのは石でも駒でもない、あえて近いものを挙げるとすれば「鈴」に近い構造であった。

 

 仏具にも使われる青銅を薄く中空にし平べったい円盤状にしたもので、表面には火と水を象形文字でデザインした物が使用されていた。

 言わずもがな防火の神様、愛宕権現にちなんだものである。

 

 実際に出来上がったのを義晴と晴子、あと当然のように湧いて来た幹も交えて遊ぶ。

 しかしルールが簡単だけに拙僧が勝てたのは最初だけで、真っ先にコツを掴んだ幹や義晴に負けるのはまだ良いとして、ついに晴子にまで勝てなくなった。解せぬ。


 挿絵(By みてみん)

 さて今は義晴と晴子の対戦を、遠くから拙僧と幹が眺めている。

 

「お似合いだね、あの二人」

 生暖かい、と言うかうっすら羨ましそうな表情で幹が言う。折角の機会なので、聞いてみるか。

 

「なあ幹。正直お主は拙僧をどう思っているのだ?」

 いつも冗談めかして婿扱いする拙僧に、本当に恋愛感情があるのか否かを。


「うーん、子供は何人欲しい?」


「いや、ふざけないで真面目に話してくれるか」

 この期に及んでコレか。やれやれ、ちゃんとした返答は期待出来ないなと思っていたが。

 

「残念。もう少し引っ張りたかったが愛宕様がどうしてもと言うのであれば、手の内を晒すのもやぶさかではない」

 芝居がかった物言いではあるが、どうやら話す気になったらしい。

 

「蒸し菓子の弁償の件は嬉しく思っていて、まさか再会できると思っていなかった。

 そして文通を重ねて、面白い子だなと思ったらしい」

 まるで他人事のように、淡々と幹が話す。

 自分のことなのに「らしい」と断言しないのが、如何にも彼女らしい。


「最初はそれだけだったけど。

 困らせると反応が楽しいから、つい調子に乗った」


 困らせてるという自覚はあったのか、しかも確信犯か。

 いわゆる好きな子に意地悪したくなる心理か。


「しかし拙僧にどうしろと?言っておくが僧を辞める気はないぞ」


「うん父から聞いた。将来寺を持って焼かれぬようにすると。そして確固たる信念を持つ相手の邪魔をする気はない。

 わたしも愛すべき猿楽と、好物の蒸し羊羹をやめる気はない」


 その比較は正直どうなんだ。


「ただ今後、もしどうしても困難で先が見えない状況になったら」


「……僧を辞めて一緒になれと?」


「ううん。そのままでいいから二人で逃げよう、どこまでも遠くへ」


 そんな状況には正直なりたくないが、それはそれで退屈しないのだろうと思ってしまった。


 

 さてこのリバーシもどきは「あた碁」と呼ばれ、商人の新五郎経由で商品化されるのだが、想定外の売れ方をした。

 そもそもお金のない庶民は金属でできた駒を必要数揃える事が出来ず、それ一個がお守りのように御利益があると単体で売れるようになったのだった。そして。


「愛宕はん、コレそろそろ白黒はっきりさせんとダメですわ」

 新五郎がそんな話をしてくる。

 はて、白黒とは。


「いや、そろそろ巷で噂になってますねん。そろそろ覚恕さんが愛宕派なり愛宕宗を興す頃合いやと」


 ああ、その事か。確かにこの知名度と信仰があれば新しい宗派を興すのは容易だろう。しかし将来的にはそうなるかも知れないが、今は時期ではない。

 何しろ拙僧は僧侶になったばかりの若輩者、しかも稚児である。新たな宗派以前に、もっと仏教の何たるかを学ぶべき修行の身である。

 そもそも今独立しようものなら後見人と称する者が現れて将軍家や本願寺のように利用されるのがオチだ。

 本願寺と言えば、ただでさえ先日の門跡問題で皇室絡みが不穏な空気なのだ、これ以上刺激したくないというのもある。それを新五郎に話すと、


「その気持ち、分からんでもないですけどな。

 時間はそない悠長に待ってくれんですよ、民衆は愛宕様への信心の拠り所を求めてはりますよって。

 愛宕信仰の偽物なんぞ出て好き放題やらはる前に対策しといた方がええんと違います?」


 対策……対策ねえ。

10/25 挿絵追加(対戦をみつめる主人公とヒロイン)

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