番外編:5 やっと休憩
デーモンが倒されると、後ろからどよめく声が聞こえた。
「「おおっ!」」「デーモンを倒したぞ!」
「これなら!」「「ああ!」」
間もなく、デーモンは霧散するように消えて黒い石をドロップしたけど、あれは魔石? それとも『帰還石』かな? 魔石だったらデーモンはA+の魔物だから……うわっ、白金貨10枚だよ!
「流石、リアム副団長が後ろ盾になるだけはある。オースティン、タロウの『雷魔法』を見たか!?」
エリオット様達に、順番に『ヒール』を掛けていると、モリス様がタロウの話をしているから聞き耳を立ててしまう。
「ああ、前衛で剣を振りながらだぞ……まだ幼いのに魔法操作が上手いな。唯一、デーモンにダメージを与える『雷魔法』……マルティネス様が欲しがっていたが、私も欲しい」
「オースティン様、『雷魔法』のスキル書は、高ランクの『火魔法』と『風魔法』を持っていたら覚えられるんでしたよね?」
「そうだ。ルーカスも、この前覚えた『火魔法』を育てれば可能性はあるぞ」
「はい、ランク上げします……」
オースティン様の言葉にルーカス様が深く頷いている。
そう言えば……フランチェ先生が、親の『雷魔法』を受け継ぐのは稀で、ほとんどがスキル書で覚えるって言っていたな。
「オースティンは火と風のスキルが高いから、『雷魔法』を覚えられるだろうけど、『雷魔法』のスキル書が出るのはボス戦の宝箱……」
シリル様、ボス戦の宝箱って……テオからも聞いた事があるけど、10階毎にボスを倒さないと下への階に進めないダンジョン――<トロムダンジョン>や<大森林ダンジョン>にある部屋で、ボスに勝った時に現れる宝箱かな?
「だけど、どこかのダンジョンでスキル書が出て、運良くオークションに出されたとしても競り勝つのは難しいね」
「ええ、シリルの言う通りですね。きっと、マルティネス様が競り勝つでしょう」
「ああ、モリス、違いない」「うん、絶対にマルティネス様だろう。フフ」「先輩方の言う通りでしょうね。フフ」
もし、レオおじいちゃんが『雷魔法』のスキル書を手に入れたら……大喜びしそう。ふふ。
「エリオット副隊長、ドロップは『帰還石』です」
「それは助かるな」
魔石じゃなかったのか~。ロペス様がデーモンの落とした『帰還石』をエリオット様に見せている。
「副隊長、デーモンのドロップ品として報告書であげます」
「ああ、アルバート、頼む」
精鋭部隊A・Bの皆さんが私達を通り越して前を歩き、デーモン以外の魔物が現れたら、精鋭部隊AとBが交互に倒して進む。
56階からは、明らかにヴァイパとサキュバスの数が減って、オークキングとジェネラルオークの3体組とマンティコアが増えて来たな。
◇
セーフティエリアを出て3時間が過ぎる頃、前を歩く精鋭部隊Aのリーダー、ライオット・ウィリアムズ様が声をあげた。
「副隊長! 階段を発見しました!」
「了解。ライオット、セドリック、階段で休憩にする」
「「ハッ!」」
はぁ~、やっと休憩ができる。ここまでに、デーモンが出て来たのは1回だけだったけど、いつデーモンが現れるかと、ずっと気を張っていたからね。
階段を下りて、57階のフロアが見える辺りで休憩をする。
皆さんは階段に座って、丸パンと干し肉を出して食べ始めた。
う~ん、ダンジョンに入って2日目……バッグからサンドパンを出して渡せないな。テオ達には上質肉の干し肉と丸パンを渡そうかな。
「テオ、この前作った干し肉と丸パンね。はい、タロウも……」
小さな声でテオとタロウに渡した。
「おう。アリス、ありがとな」「ありがとう、アリス」
2人が干し肉に齧りついたと思ったら叫んだ。
「「旨い!」」
あっ……2人が大きな声を出したから、みんながこっちを見たじゃない。しまったな~、上質肉で作った干し肉だって言っておけばよかった。
「アリス! あっ、えっと……この肉は……」
「この……、干し肉は……」
2人は周りの視線に気が付いて、小さな声になったけどもう遅い。
「えっ、アリスが作った干し肉だって……」
「アリスが「……」」
ロペス様が目をキラキラさせて……食べたいって顔で私を見る。エリオット様とアルバート様は、表情には何も出ていないけど、視線はテオが持っている干し肉です。他の方も気になるって顔をしてテオやタロウの干し肉を見ている。
テオが小さな声で「アリス、すまん。皆の分はあるか?」って聞くから「うん……3塊分は作ったよ」多めに作っていて良かった~。
細長くカットした上質肉の干し肉を、お裾分け程度に3本ずつ皆さんに配った。全部は配りませんよ。
「ええー! アリス、上質肉で干し肉を作ったのかい? 何て贅沢な干し肉なんだ……」
「えっと、ロペス様。この前、ハイオークが上質肉を落としたので干し肉にしたんです」
良い肉の隠蔽工作には干し肉です。
「そう言えば、アリスはワイバーン討伐の時も干し肉を作っていたね……あの肉でも」
「エリオット様……はい、そうでしたね」
あの時、エリオット様達にはお土産としてワイバーンの干し肉とドラゴンの干し肉を食べてもらったな。両方の干し肉は、完食してもうないけどね。
上質肉の干し肉は、ドラゴンの干し肉と比べたら味は落ちるけど、ワイバーンの干し肉とだったら、好き好きは分かれるかも。
ワイバーンの干し肉は、癖が強かったけど、噛めば噛むほど肉の旨味が口いっぱいに広がって美味しかったな……。
この上質肉の干し肉は、癖が無くて、肉や脂身に甘味があって美味しい。脂が多いからか、柔らかくて食べやすいの。
どっちの干し肉が良いと聞かれたら……私は上質肉の干し肉かな。
「この干し肉も美味しいな……。改めて思うが、アリスは料理が上手いな」
「うん。アリス、美味しいよ!」
アルバート様、ロペス様、褒めていただいて嬉しいですけど、おかわりはありませんよ。
「「「……」」」
はっ! 早くも上質肉の干し肉を食べ終わった騎士様達がこっちを見ている。
えっと……『おかわりはありませんよ』と、言葉を込めてにっこり笑顔を返しておこう。




