第116話 剣術大会と魔術大会③
「「「あっ!」」」
爆音と共に立ちのぼった煙を切り裂くように、風の刃がスカーレット様へ襲い掛かった。
スカーレット様は『ファイアウォール』で炎の壁を作って防いだけど、リカルド様が再び魔法を詠唱したのか、風の渦が立ち上がる。
「「「なっ、何!! まさか」」『トルネード』かっ!?」
「「「有りえないだろう!?」」どれだけMPがあるんだ!」
「「スカーレット様、危ない!」」
スカーレット様も魔法を詠唱したけど、炎がグワッと一瞬出ただけで消えてしまった。
上位の魔法を撃とうとして……MPが足りなかった? 慌ててマジックポーションを2本飲み干して詠唱を始めたけど間に合わない!
立ち上がろうとした炎が、『トルネード』に押しつぶされて跡形もなく消えてしまい、『トルネード』がそのままスカーレット様に襲い掛かる――スカーレット様が危ない!
「「うわっ!」」「「スカーレット様ー!!」」「「キャー!」」
『勝者、リカルド・フェルナンデス!』
審判の声が響いくと同時に、スカーレット様が炎と土の壁に覆われた。
『トルネード』が炎と土の壁に阻まれて霧散すると、スカーレット様の姿が見えた。
「はぁ……、スカーレット様は無事だよ~!」
「うん、無事で良かった……。あれは誰の魔法?」
「あの『ファイアウォール』と『アースウォール』は、先生達の魔法だと思うよ」
ミハエル様曰く、出場している生徒が必要以上に怪我を負わないように、先生達が近くで待機しているそうです。
良かった……。あの『トルネード』がそのままスカーレット様に向かったら、大変なことになっていたと思う。
『ウオー! リカルド様―!』
『キャ~! リカルド様、おめでとうございます!』
競技場に立つ優勝者のリカルド様に、観客席のあちこちから歓喜の声があがり、ミアと私も拍手をしながら「「おめでとうございます!」リカルド様~!」と叫んだ。
◇
魔術大会が終わった後、観客席に戻って来たソフィア様に駆け寄った。
「ソフィア様、怪我はしていませんか?」
「ええ、大丈夫よ、アリス」
大丈夫だと言われても、失礼しますと言ってソフィア様の手を取って『ヒール』と『クリーン』を掛ける。触れなくても『回復魔法』を飛ばせるけど、丁寧に魔法を掛けたかったから。
「まあ、これは『回復魔法』ね。アリス、ありがとう。ふふ」
「2回戦で相手がスカーレット様じゃなかったら、絶対にソフィア様は準決勝まで進めたのに~」
ミアが、両手を握り締めてソフィア様にすり寄る。
「ああ、僕もそう思うよ。ソフィア様、相手が悪かったね」
「ふふ、運も実力だと言いますからね。みんな、ありがとう」
◇
休憩を少し挟んで、剣と魔法を使って戦う総合競技が始まった。ユーゴが騎士団の目に留まる為に参加している。
騎士科で、魔法が得意な生徒が出場しているけど、剣を交えながらなので『トルネード』みたいな派手な魔法を撃ったりはしない。
「あっ、あっち! 左側にユーゴがいるよ。ユーゴ、ガンバレ~!」
「どこ……あっ、ユーゴだ! ユーゴ、頑張って!」
ミアが指差した方にユーゴが見える。緊張しているのかな? ユーゴが大きく深呼吸しているのがわかる。
「ユーゴは総合競技に参加して、騎士団にアピール出来たかしら?」
「ソフィア様、騎士科のCクラスの生徒が、総合競技に参加するだけでも目立つから、ユーゴの目標は半分達成したと思うよ」
ミハエル様が、後は試合内容だねって言う。
ユーゴの1回戦の相手は『風魔法』を使う生徒で、上手く魔法をかわして勝ったけど、2回戦の『水魔法』を使う相手で、ミアと私は声をからして応援したけど……負けてしまった。でも、1勝したから目立ったよね。
そして、優勝したのは、なんと剣技大会の優勝者。
「剣技大会と総合競技の両方で優勝するなんて、凄いよね~!」
「うん。ミア……あの優勝した人、『火魔法』の使い方が派手だったよね」
「うんうん、『火魔法』をバンバン撃っていたね!」
そう、目を引くような爆発系の魔法ばかり使っていた。
「彼は嫡男だけど、優秀な弟が2人いるそうだよ。両方で優勝したら、爵位の座は確実なんじゃないかな~」
「優秀な弟……ミハエル様、その弟達も数年後の剣技大会で優勝する可能性があるんですね」
「ソフィア様、そうなった時の為に保険は掛けておいた方が良いからね。フフ」
保険……貴族は大変ですね。
◇◇◇
大会が終わって、1週間程で内定者の発表があった。玄関ホールに名前が貼り出されて、多くの生徒が集まっている。
騎士科の知り合いの方は、みんな騎士団の内定者として名前が書かれていた。「おめでとうございます!」って心の中でつぶやく。
騎士団の内定者の下段にユーゴの名前を見つけて、「やったー!」って飛び上がって叫びそうになった。ユーゴのクラスまでお祝いを言いに行きたかったけど、騎士科のクラスに行く勇気がないからお昼まで我慢する。
◇
お昼の食堂で、ユーゴはみんなから「おめでとう!」を言われると、凄く嬉しそうに照れながら「うん……ありがとう!」だって。ふふ、ユーゴも来年『特別科』に進むことになるそうで、良かったね。
第一か第二騎士団の、どっちに配属になるかは『特別科』の授業終了後に決まるそうです。
宮廷魔術師として内定が出たのは、リカルド様とスカーレット様でした。やっぱり、って思うのは私だけじゃないよね。
みんなが、2人を見かけると「おめでとうございます!」と声を掛けるんだけど、その度に取り巻きの貴族が(特にリカルド様の取り巻きの令嬢方が)ドヤ顔をしている。ふふ。
残念ながらソフィア様の名前はなかったけど、ソフィア様とミハエル様は<魔術研究所>の研究員に採用されたと教えてくれた。なので、2人は4の月から宮廷魔術団の施設内にある<魔術研究所>で働くそうです。
「<魔術研究所>は宮廷魔術団の敷地内にあるのよ。マルティネス様のお近くで働けるなんて……ふふ、幸せです」
「そうだね。でもソフィア様、リアム副団長の仕事ぶりを見るのも楽しみだよ」
ミハエル様はリアム様のファンだったのか……知らなかった。
ミアは、卒業したら実家の宿を手伝いながら、お婿さんを探すって言っている。年の離れた妹がいるらしいけど、ミアが宿を継ぐんだって。
「結婚するなら、美味しい料理を食べさせてくれる料理人が良いなぁ~って、思っているの」
ミアらしいね。ふふ。
私は『特別科』には行かず、卒業したら薬屋の店番をするの。リアム様には、テオからちゃんと話してもらった。
「……そう言うことで、リアム殿、アリスが学園を卒業したら、アリスが作るマジックポーションは毎月届けられると思います」
「テオ殿、毎月ですか!? それは……フフフ、楽しみですね」
と、リアム様に笑顔で言われたそうです。テオは、リアム様に反対されないようにマジックポーションを引き合いに出したそう。
後日、リアム様に「『特別科』には行かないのですね?」と確認されたけど、特に何のお咎めもなかった。
これからも、火の曜日にはレオおじいちゃんとお茶会をして、週末の闇の曜日と光の曜日はテオとタロウの3人でダンジョンに入るんだろうな。
もう少しダンジョンに慣れたら、ミノタウロスを狩りに行くのが今の目標です。ふふ。
【本編完結】
【あとがき】
こちらで本編完結となります。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
番外編も後日投稿します。
お付き合いいただけたら嬉しいです。




