避難誘導
レストランの屋根を突き破ってリセイ達の前に現れた<魔人>だったが、先刻それを目の当たりにしたリセイとライラには、先に遭遇した時との違いがあまりに大きくて戸惑っていた。
そんな中、
「なんの用…?」
リセイがまるで唐突に現れた顔見知りに問い掛けるようなそれで声を掛けてしまう。
「……」
けれど、その魔人は応えなかった。
『言葉は通じないのか……?』
明らかに無視しているとかいうのとは違う印象のある様子に、そんなことも思う。
そこに、
「何事か!?」
役所の門近くで警備していた兵士が異変を察して報告、それを受けて当直の部隊が駆けつけた。第七隊だった。
手分けして出口近くの客から順番に避難させつつ、全身が毛皮に覆われた異様な風体の、子供にも見える<何か>の存在に気付き、
「貴様! 何者だ!?」
第七隊隊長のドルフットが厳しく問い掛けつつ剣を構える。
けれど、
「待ってください!」
リセイがそれを制する。
「リセイ!? どういうことだ、これは!? こいつを知っているのか!?」
ルブセンに報告され、順次、部隊の隊長・副隊長が集められ情報共有は図られていたものの、当直だった第七隊については交代時に呼ばれるはずだったため、この時点ではドルフットは魔人のことを承知していなかったのだ。
リセイは応える。
「こいつは<魔人>です。でも、今は敵意を向けてない。ヘタに刺激しないでください。ここで暴れられたら、被害が出ます。落ち着いて、ゆっくりと他のお客を避難させてください。こいつはたぶん、僕を追いかけてきたんです」
あまり大きな声じゃなく、なるべく平坦で眼前の魔人を刺激しないように穏やかに言った。
「……!」
リセイの言葉を受け、ドルフットはちらりとライラを見た。するとライラも、
「リセイの言うとおりだ。今のこいつは比較的落ち着いてるようだ。私達が気を引いている間にここにいる全員を避難させてくれ」
と告げる。
「分かった……」
リセイだけでなくライラもそう言うということは間違いないのだろうとドルフットは判断。
「皆、落ち着いてゆっくりとこちらに来るんだ。慌てなくていい」
その指示に従い、客も従業員も店外へと避難していく。タティアナ達もそろりそろりと移動して、第七隊の兵士達に迎えられ、破片が当ったかして多少の怪我はあったようだが無事に避難した。
だが、リセイとライラの背後にいたティコナとファミューレは動くことができずにいた。
そろりとテーブルの下からは出てきたものの、その姿を捉えた魔人が意識を向けるのが分かったのだ。
だからリセイとライラが、
『動くな…!』
と手をかざして制したのだった。




