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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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招かれざる客

「何事!?」


突然の事態に、しかしライラは毅然と振舞った。隣に座っていたファミューレの体を掴んでテーブルの下に押し込みつつ、自分は前に出て身構える。


一方リセイは、ティコナを庇っていた。


けれど彼女が無事であることを確認し、それから、


「ティコナも隠れてて!」


と言いながらライラの横に並んだ。


それと同時に、店全体を見渡して他の客達の様子も窺う。


「きゃーっ!」


「うわーっ!!」


などと混乱した悲鳴は上がるものの、苦痛を訴える声は今のところなかった。どうやら現時点では大きな怪我をした者はいないらしい。


それを探っていたのはライラも同じだった。特に、タティアナ達の様子を窺い、無事を確かめた。


そして、この事態の原因を探る。


と、もうもうと上がる埃の中に人影が見えた。


「!?」


瞬間、彼女の背をゾワッとしたものが奔り抜ける。本能的に危険を察し、全身から汗が噴き出し、筋肉が緊張する。


その彼女の隣で、リセイが声を上げた。


「お前は……!」


ライラに先んじて彼には分かったのだ。<それ>の正体が。


「うるるるるる……っ!」


煙幕のような埃の中から届く唸り声。


獣のようにも思えるが、<獣>じゃないことはリセイには分かっていた。


「追いかけてきたのか……!」


声を掛けると、そいつは腕を鋭く振る。埃を掃おうとするかのように。


ぶわっと空気が渦を巻き、僅かに視界が開ける。


そこに見覚えのある<視線>。


「魔人…っ!!」


ライラが思わず声に出しさらに全身に力を漲らせたものの、逆に、リセイは、


『…あれ……?』


違和感を覚えた。確かにあの時の魔人であることは間違いない。間違いないのだが、何かが違う。


だから、


「隊長…ちょっと待ってください……」


ついそんなことを口にする。


彼は感じていたのだ。マルムの森で対峙した時には確かにあった刺さるような気配がないことを。


それは、ライラも同じだった。


「…? ……こいつ、敵意を向けてない……?」


あの時の印象があまりにも強烈だったことで、その差がはっきりと分かってしまう。何しろあの時は心臓そのものを握り潰されるような、体中に鉄の杭が打ち込まれるようなビリビリとした危険を感じたというのに、今は確かにそれがない。


だからと言って油断はできない。警戒は解けない。そんなことをして取り返しのつかないことになっては後悔してもしきれない。騎士という立場上としても警戒しないわけにはいかない。


ただ、そこまで兵士としての本能のようなものが染み付いているわけではないリセイは、


「なんの用……?」


と、魔人に問い掛けていたのだった。



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