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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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相席

トランの件については、納得はできなかったものの自分には何もできないということは理解できた。なのでこれ以上頭を悩ませても逆に皆に迷惑を掛けてしまいそうなので任せることにする。


だからとにかくティコナの家に帰り、あたたかい家庭で気持ちを切り替えたかった。


「ただいま~♡」


「おかえり~♡」


すっかり習慣になったやり取りに、胸があたたかくなる。


「おかえり♡」


「おかえり」


ミコナとシンも笑顔で迎えてくれる。


仕事終わりに食事に来る客が押し寄せる時間はすでに過ぎていたので、リセイはそのまま店で夕食にする。


今日はマルムをたっぷり使ったパスタ(によく似た麺料理)だった。


「こんなにマルム入れて大丈夫なんですか?」


ティコナがマルムの収穫に行けなくて業者から仕入れていることはリセイも知っていたので、思わず心配になってしまう。


しかし、シンは、


「大丈夫だ。お客用に用意してた分の残りだからな。それにもう香りの旬は過ぎたやつだ。気にしなくていい」


マルムは下ごしらえをしてから最も香りが良くなるまでに三十分ほどのタイムラグがあるので、客に出す料理にはやはり一番いい時を狙って準備する。


しかしその分、客の入りやその時に客が頼むメニューによっては用意した分が残ってしまい、タイミングを逃してしまうことがたまにある。今日のように。


いつもは残ることがないのだが、たまたま間が悪い時もあるということだ。


そうなると、当然、<まかない>などに使うことになる。


客に出すには品質はあれなものの、これで無駄にはならない。


と言っても、リセイにはまだそこまでマルムの香りの違いはよく分からなかった。


『十分、美味しいと思うけどなあ』


まあこの辺りも子供の頃からの食習慣の違いが影響するだろうから、あまり細かいことを気にしても詮無い話とは思われる。


と、夕食を終えようとしていた時、


「いらっしゃいませ~!」


ミコナが声を上げた。またお客が来たらしい。


リセイも反射的にそちらに視線を向けると、若い女性の三人組だった。


エディレフ亭はいわゆる大衆食堂であり、客層のほとんどは労働者か近所の常連なので、若い女性だけのお客というのは珍しかった。


するとその三人組は、迷うことなくリセイの方へとやってきて、


「相席、いいですか?」


と訊いてきた。客はもうまばらで他に空いている席はいくつもあるのにも拘らず。


自分を見下ろす、ティコナよりは少しだけ年上っぽい女性達に、


「は…はい……」


リセイは気圧されながらも承諾した。


「ありがとう…」


三人の女性は少し険しい表情でリセイを取り囲むように座る。


それから、


「ルアダ三つ」


と注文する。一応は客として来ているということなのだろう。<ルアダ>とは、リセイがいた元の世界で言うと、<温野菜のサラダ>である。


ちなみに野菜に限らず食材を生のままで食べる習慣は基本的にない。この辺りはさすがに技術的な点で衛生管理が難しいからだろう。


「ルアダ三つ入りました」


注文を聞きに来たティコナも怪訝そうにはしながらも、客ということであれば口出しできなかったのだった。



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