狂いだす歯車
診療室のドアを静かに開けて中を覗くと、ベッドに横たわっていた広瀬さんの娘はすでに目を覚ましていた。ゆっくりと重湯を食べているところだった。
「良かった、食べられるようになったんだね」
声をかけると、少女はスプーンを止め、大きな目で僕をじっと見つめた。
「井上さん、ありがとうございます」
「あれ? まだ自己紹介をしていないよね。どうして僕の名前を?」
白崎先生から聞いたのだろうかと思っていると、彼女はクスクスと小さく笑って教えてくれた。
「広瀬咲愛です。私はコンビニで働いている広瀬の娘です。井上さんのことは、お店で何度も見て知っていました」
「なるほど、やっぱり広瀬さんの娘なんだね」
「そうなんですよ。お母さんからも井上さんのことは聞いています。真面目でカッコいい人だって……私も本当にそう思います」
「ははは、咲愛ちゃんみたいな子供にカッコいいと言われると、なんだか照れるよ」
「子供扱いはしないでください。井上さん、私にキスしましたよね?」
「ちょ、ちょっと待って、起きてたの!? あれは水分を与えるための人工呼吸みたいなものだから!」
慌てて弁明する僕の様子がおかしかったのか、衝立の向こう側から楽しそうな笑い声が漏れ聞こえてきた。
「プッ、クックッ、アハハハ」
振り返ると、白崎先生が口に手を当てて笑っていた。
「白崎先生、いつから……」
「始めから居ましたよ、ごめんなさい笑ってしまって。ホントに咲愛ちゃんは大人びてるわね。それに、井上さんたら……プッ、アハハハ」
「もう、笑わないでください。それで、咲愛ちゃんの容態は?」
「内臓の機能低下を心配していたけれど、問題無いわね。栄養をとって安静にしていればすぐに元気になるわ」
「ありがとうございます。それと先生、少しお話が有るのですが」
「何かしら?」
チラリと咲愛ちゃんを見ると、興味深そうにこちらに聞き耳を立てているようだった。浜田の件は、彼女の耳に入れない方がいいだろう。
「実は浜田さんから、薬が不足していると聞きまして。お世話になったお礼に、調達を協力しようかと思いまして。少し内密な話になりますし、咲愛ちゃんが眠れないと思いますから、先生の部屋でお話してもよろしいですか?」
「構わないわ、夕方の検診まで時間が有りますから」
部屋を出る前に咲愛ちゃんの元に行って手を出すと、彼女は笑顔を浮かべて小さな手で僕の手を握ってくれた。かすかにありがとうと囁く声が聞こえた。
咲愛ちゃんは目が大きくて、子役として活躍出来そうな程、本当に可愛い顔をしている。
「井上さんは、ホントに優しいわね」
廊下を歩きながら、白崎先生がしみじみと言った。
「そうですね、特に女性には優しいですよ。だけど、怖い面も有るんですよ?」
「まあ、そういう井上さんも見てみたいわね」
(――すぐに見る事になりますよ、先生)
心の中で呟いた。この施設を牛耳ろうとする浜田から彼女を守るため、そして僕たちの安全を確保するためには、ただの優しい男でいるわけにはいかない
白崎先生は僕を施設長室に迎え入れてくれた。出入口は1つで、中から施錠できる構造になっている。
カチリ。
部屋に入ると同時にドアを閉め、内側から鍵をかけた。
「どうして鍵を? 井上さん、こんな時に冗談はやめてください」
突然の施錠に、白崎先生はニッコリと微笑んでいた顔を徐々に強ばらせ、不審そうな声を上げた。しかし、僕はこれから話す極めて重要な密談を、誰にも、特に浜田の耳に絶対に入れさせたくなかった。
「先生、冗談ではありません。浜田さんのことです。彼は、この施設の実質のトップは自分だと言っていました」
「え……? 浜田がそんなことを?」
「ええ。それだけじゃない。彼は先生を自分の嫁にして、この施設を力で支配するつもりだと豪語しました。さらに、僕の仲間の奈穂を自分に回せば、先生を僕に譲ってもいいとまで言ってきたんです」
「な、何ですって……!? そんな、まさか……」
白崎先生はショックのあまり顔を青ざめさせ、激しく動揺して言葉を失った。
「平常時のモラルが消え去った今、あの男は本気で力による独裁を目論んでいます。このままでは先生も、この施設にいる人たちも危険だ。……だから先生、僕はあなたを、浜田のような奴らから守りたい。僕の女として、僕たちのマンションに迎え入れたいんだ。――さっき医務室に向かう途中、僕に気持ちを伝えておけばよかったと言ってくれましたよね? あの言葉の真意を、聞かせてくれませんか」
白崎先生の目を真っ直ぐに見つめ、一歩、彼女との距離を詰めた。
「白崎さん、僕に伝えたい気持ちって何ですか?」
「それは……ちょっと待って、やめてください井上さん! ダメよ、こんな所で」
背後から良子を強く抱きしめ、その耳元で低く呟いた。
「君を初めて見た時からずっと思っていたんだ。僕の女にしたい、いいだろ?」
「いきなり何を……やめて、冷静になってください!」
良子は僕に好意を持っているはずだ。それに彼女も20代後半の成熟した女で、彼氏もいない。きっと性欲を持て余しているに違いない――身体に触れて快楽を与えさえすれば、最終的には必ず受け入れるはずだ。
そう確信し、半ば強引に良子と関係を持つべく行動に移した。
「井上さんどうしたの!? 無理矢理しようとするなんて、やめて、イヤなの! それ以上は触れないで、イヤだって言っているでしょ!」
パシン――。
ソファーに押し倒し、白いブラウスのボタンを外そうとした瞬間、乾いた音を立てて頬を叩かれた。
拒絶されたことに苛立ちが募り、僕は咄嗟にその頬を殴り返してしまった。
バシーン!
「抵抗するな! 殴られたくなかったら、大人しくしていろ!」
激しい苛立ちのせいで、まるで安っぽいレイプ犯のような脅し文句が口から突いて出る。
歯車が狂ってしまったかのように上手くいかない。だが、こうなった以上は身体を芯から感じさせて、向こうから求めさせてやるまでだ。
僕に頬を張り返された良子は、顔を恐怖に強ばらせて一瞬だけ抵抗を止めた。しかし、僕がブラウスの前を押し広げてブラジャーに手を伸ばすと、再び激しく暴れ出した。
仕方がなく、良子の両手を左手で乱暴に掴み、頭の上へと力づくで固定した。
「やめてよ、こんなのレイプじゃない……!」
「君が暴れるからだ。気持ちよくしてやるから大人しくしてろ」
「あなたが、こんな最低な事をする人だとは思わなかったわ……。今すぐにやめて、出ていって!」
「うるさい! 黙っていろ」
「黙らないわ! 助けて! 誰か来て!」
腕力では敵わないと悟ったのか、良子は大声を出して救いを求め始めた。
この部屋はフロアの一番奥にあるため、普段から職員が訪れる可能性は低い。それに鍵をかけてある以上、誰かが入ってこられるわけもない。
だが、これ以上大声で騒がれれば周囲に気付かれるリスクがあった。
ウグッ……。
必死に叫ぶ良子の、その細い首筋に右手を伸ばし、容赦なく圧迫した。
喉を強く締め上げられると息ができないのか、彼女は大きな声を出すのをピタリとやめ、魚のように口をパクパクと動かした。
「はぁ、はぁ……酷い……首を絞めるだなんて……」
「大声を出したら、また締めるからな」
「脅迫するのね……好きにすればいいわ、あなたはケダモノよ」
「なんだと!」
ケダモノ呼ばわりされたことで頭に血が上り、思わず手を振り上げたが、辛うじて殴るのだけは思い止まって手を下ろした。そしてそのまま、その手を彼女のスカートの中へと滑り込ませ、白いショーツを掴んで一気に引き抜いた。
ついに抵抗する気力を失ったのか、良子はきつく目を閉じて身体を硬直させていた。
「ほら、観念して足を開いてくれ。気持ちよくしてやるからさ」
「誰が、あなたなんかに……イヤッ、見ないでよ……!」
良子の衣服は、白衣の下に白いブラウス、膝丈の白いスカート、そして下着に至るまで全てが純白で統一されていた。医師である以前に、彼女自身が極めて綺麗好きで、潔癖な性格なのだろう。
ブラウスをはだけられ、上半身を半裸にされた状態でショーツまで剥ぎ取られた良子。その細い膝を掴み、力任せに左右へ押し広げた。薄いアンダーヘアの隙間に、ぴっちりと閉じられた秘部が露わになる。
僕はそこへ舌を伸ばし、容赦なく舐め回し始めた。
「そんな……汚いです……あなたが病気になるからやめてください……!」
懇願するような声を無視し、ワレメとクリトリスを執拗に愛撫し続ける。しばらくすると、本能には抗えないのか、ウネウネとそこが蠢いて徐々に口を開き、中から溢れた愛液が指先を濡らし始めた。時折クリトリスを強く吸い上げると、その刺激に彼女はビクンと腰を震わせた。
「愛液が溢れてきているぞ。気持ちよくなって来ただろ?」
「違います……それは単なる条件反射です……痛いだけです……っ」
「それなら、もっと気持ちよくしてあげるよ。もっと足を広げてくれ」
「イヤです……やめてください……」
良子は拒否の言葉を口にするものの、大きく広げられた足からは完全に力が抜け、僕のなすがままに従っていた。
クリトリスを吸いながら、溢れ出る愛液で濡れた蜜穴に指を差し込んで刺激を誘うと、彼女はせわしなく腰を動かし、ガクガクと小刻みに震えだした。
「イっただろ?」
「はぁ、はぁ……違います……こんな……こんな無理矢理にされて、感じる訳が……」
「強情な人だな。まあいい、準備は出来たから入れるよ」
「本当に……私を犯すのですか?」
「もちろんだ」
「そんな事をしたら……貴方を絶対に許しません……!」
これほど身体を濡らして感じているにもかかわらず、良子は強い眼差しで僕を真っ直ぐに睨みつけていた。どこまでも強情で、素直になれない女だ。その澄まし顔を、今すぐ圧倒的な快楽で歪めてやりたかった。
濡れそぼる秘部をこちらの肉棒で擦りつけるようにして、たっぷりと愛液を纏わせてから、その狭い穴へとズブズブと力強く押し込んでいく。
きつい。狭いな……それに、これは……。
「……本当に、初めてだったのか……」
「ウソなんか吐きませんよ……ホントに酷い人……っ!」
「乱暴にして悪かったな」
「今さら何ですか、ソレは……あっ……もう、キスなんてしないで……ンッ、チュッ……アグゥッ……!」
言葉を遮るように唇を塞ぎ、舌を滑り込ませて口内を激しく舐め回しながら、一気に腰を突き入れて彼女の処女膜を突き破った。
口を塞がれた良子は大きく目を見開いた後、観念したように強く瞼を閉じた。そして、その目尻から一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。
無理やり処女を奪ってしまったことに、微かな同情の念が浮かばなかったわけではない。しかしそれ以上に、あの気位の高い良子の初めての男になれたという歪んだ喜びと、泣いている女を犯しているという背徳的な事実に、僕の興奮は最高潮に達していた。
「後ろから入れるから、机に手を突いて尻を突き出してくれ」
「クッ……好きにすればいいわ」
僕に言われるがまま、良子は机に両手を突き、無防備な姿勢を取った。僕はその白く小ぶりな臀部を後ろから激しく突き上げた。両手で細い腰をガッチリと掴み、何度も肉体をぶつけ合わせながら、肉棒で彼女の最奥を容赦なく突いた。そして、限界を迎えた弾みに、その中へと一気に射精した。
ゆっくりと腰を動かし、最後の一滴まで精子を注ぎ込むと、それまで身体を支配していた激しい興奮が急速に収まっていくのを感じた。
「中で出すなんて……ホントに酷い人……。あなたはサイテーです。気が済んだなら、もう出ていってください」
「君も嬉しかったんじゃないのか?」
「まだそんな事を……! あなたとはもう、何も話したくないわ。二度とこの施設にも来ないでください!」
良子は心底憤慨しているようで、その怒りが収まる気配は全くなかった。
僕は良子を浜田たちから守るため、彼女を自分の女にしようと思ってセックスに及んだつもりだった。しかし彼女にとっては、ただ無理やりレイプされたという最悪の事実しか残らなかったようだ。
コンコン。
誰かがドアを叩く音がした。しかし、良子はソファーに顔を埋めたまま、ただ声を殺して泣き続けていた。僕は衣服を整えながら、ドア越しに声をかける。
「白崎先生は今、手が離せないようですが、どなたですか?」
「マサキさん、奈緒です。開けてください」
扉を開けると、そこには荷物を抱えた奈緒が立っていた、マンションからすぐに戻ってきたようだ。彼女は部屋に一歩足を踏み入れ、室内の異様な空気と良子の姿を目にすると、ハッと息を呑んで驚きの表情を浮かべた。
「こ、これは……」
「彼女、初めてだったようでね。僕も少し興奮してしまって」
「……ショックでしょうね。でも、大丈夫だと思いますよ、彼女なら。それよりもマサキさん、この手紙を彩香さんから預かってきました。至急、目を通して欲しいとのことです」
奈緒から手渡された手紙を開き、文字を追った僕は、あまりの衝撃に言葉を失った。現実の状況は、僕の想像を遥かに超えるスピードで最悪の方向へと動いていたのだ。
※少し過激な性描写や表現もありますから、ミッドナイトノベルに移行中です
18禁になるであろう閑話と挿絵も追加してあります




