岡田の魔法
ベランダに出て下を見下ろすと、恐ろしい数のゾンビがマンションの敷地内に密集していた。閉め忘れたガラス戸の隙間から、奈穂の尋常ではない嬌声が響き渡ったため、音に反応して集まってきてしまったのだろう。
下にひしめく死人の群れに微かな恐怖を覚えつつも、ロープを伝って3階へと降り、彩香の部屋へと戻った。
「お風呂を入れておいたわ。さっぱりしてきて」
部屋に入るなり、彩香が穏やかな笑みで迎えてくれた。どうやらこの部屋にまで奈穂の声が響いていたようで、気を利かせてくれたらしい。
彼女の好意に甘え、浴室で汗と汚れを綺麗に洗い流した。浴槽から上がったあと、この後の展開を確信していた僕は、再び自らの肉棒にあの媚薬を慎重に垂らし、馴染ませた。
着替えがなかったため、素っ裸のままでリビングへと戻ると、予想通り彩香が妖艶な視線で僕を誘ってきた。
「私とも、してくれる?」
彼女の美しい肢体を見つめた瞬間、僕の脳裏に、先ほど7階で見た動画の中の、岡田に犯されて激しく乱れていた彩香の姿が鮮明にフラッシュバックした。
「あなた、本当に凄いわね。あの402号室の意地張り女子大生を、たった1日で従わせちゃうなんて」
「ちょっとした魔法を使ったからね」
「魔法……?」
「そう、魔法。――君がかつて、岡田にかけられていた魔法だよ」
静かにそう告げると、彩香は驚愕に目を見開き、その場で完全に硬直した。だが、すぐに僕の言葉の意味を理解したのだろう、微かに怒りと気まずさを孕んだ瞳でじっと睨みつけてきた。
「あなた……岡田の部屋で動画を見たのね?」
「ああ、見たよ。見るべきか、正直に言えば迷った。だけど、君の過去のすべてを知っておきたかったんだ。僕にとって、君はもう特別な、大切なパートナーだからね」
彩香は自嘲気味にふっと息を漏らし、視線を落とした。
「そうよ。私はあの岡田に、いいように玩具にされていたの。……定期的にお金を受け取ってね。私は、そういう汚い女なのよ」
「違うな。お金だけが理由じゃない。君は、岡田の与えるあの異常な快楽を自らが求めて狂っていたんだ」
「……嫌なところを突いてくるのね。ええ、認めわよ。確かに彼のセックスは暴力的に最高だった。あなたのセックスも愛があって好きだけど、岡田のそれは、身体の芯だけがおかしくなるくらいに強制的に感じさせられるの」
「それが魔法だよ。僕もその魔法を使えるようになったんだ……試してみるかい?」
「本当に……? 使えるの?」
「ああ。まずは舐めて勃起させてほしいな。さっき出したばかりで、少し元気が足りないからさ」
「いいわよ。今のあなたは乾く暇もない感じだものね」
全裸で立つ僕の前に、彩香は躊躇なく膝をついた。そして、ペロペロと熟練した滑らかな舌使いで肉棒を愛撫し始めた。先ほどの奈穂の拙いフェラとは次元が違う、脳が蕩けそうなほど心地よい刺激が押し寄せる。
愛撫を始めてしばらく経つと、彩香の白い肌が徐々に上気し、吐息が劇的に甘くなっていくのが分かった。
「どうだ? いつもより美味しく、狂おしく感じるだろ?」
「ええ……なんだか、身体の奥が信じられないくらい熱いわ。嘘、これ……岡田の時と、全く同じ感覚だわ……っ」
「もう少し、効果を高めてあげるからね」
彩香の豊かな黒髪を両手で掴むと、彼女の喉の奥深くへと、何度も容赦なく肉棒を突き入れた。
「ウグェっ、はあん、う、うっ……! ウグゥ、んんんっ……ぷはぁっ! はぁ、はぁ……すごいわ、頭が、クラクラして視界が回る……っ」
確信した。激しく咽せ返らせ、呼吸を荒くさせることで、呼吸器の粘膜から一気に媚薬成分が脳へと駆け巡るのだ。だからこそ岡田は、動画の中で女性たちに無理やり乱暴な口淫を強要していたのだ。
「ねえ……もう、堪らないの。お願い、井上さん……っ」
「僕も舐めてあげるから、そこに座って、自分の手で脚を大きく広げてごらん」
「はい……っ。こう、ですか……?」
「いいよ。お前のおマンコ、もう涎を大量に垂らして、欲しそうにヒクヒクと震えてるぞ。……写真を撮るから、指でそこを広げてみろ」
「はぁ、はぁ……写真を撮るのね……っ。ええ、いいわ、本当にあの人そっくり。広げたわよ、いいわ、撮って 淫らな姿をカメラに焼き付けて……っ!」
カシャッ、カシャッ、とスマートフォンのシャッター音が室内に響く。
「撮られてる……っ。せっかく岡田が死んで解放されたのに、今度は、あなたという新しい主人に飼われるのね……。はぁ、はぁ……っ」
ピチャピチャ、ズズー、と濡れそぼる彼女の最核心を舌で貪る。
「はあああん! そんなところ……っ、あああ! あの人だって、そんなに優しく舐めてくれなかったのに……! 凄いわ、井上さん、わたし……あなたが好き。あなたが好きっ! イっちゃう、あああ、ああーーッ!」
強烈な媚薬の効果も相まって、彩香は僕の舌の愛撫だけで、あっさりと激しい絶頂を迎えて身を悶えさせた。優しく唇を重ねてキスを交わすと、彼女は恋い焦がれるような目をして僕の首に強く抱きついてきた。
そのままベッドへと移動し、僕は仰向けに寝転んで、彩香を自分の上に乗せる形をとった。
「お前が上に乗って、好きなように動いてごらん」
「ええ……っ、はぁぁああ、気持ちいい……! 好きよ、あなたのこの固いチンポ、大好きなの……っ!」
僕の上に跨がった彩香は、衣服を着たままでショーツだけを脱ぎ捨てていた。彼女はこの極限の引きこもり生活の中でも、決して身だしなみを崩さず、完璧な化粧と綺麗な服装を維持していた。今も、上質な白いブラウスに、膝丈のプリーツスカートを身にまとっている。その高級なスカートの裾から伸びる、白くしなやかな太ももが異常なほどにエロティシズムをそそった。
そんな気品溢れる美女が、ただ純粋な快楽を貪るために、髪を振り乱して一心不乱に腰を振る姿は、言葉にできないほど卑猥で、そして美しかった。
「はぁ、はぁ……っ、また、イきそう……っ! ああ、気持ちよすぎるわ、はぁぁああああ!」
何度目かも分からない大きな絶頂の波が押し寄せ、彼女は激しく身体を震わせながら、僕の胸板へと力なく倒れ込んできた。
僕は愛おしさを込めてその細い身体を抱き締め、今度は対面座位の体勢へと移行した。結合したまま、ゆっくりと腰を動かし、互いの顔を至近距離で見つめ合って深いキスを何度も交わす。
「ああ……幸せよ。すごくいいわ……。こんなに心まで満たされる気持ち、生まれて初めて……」
「……まだ、岡田のことが忘れられないかい?」
僕の問いかけに、彩香はウフフと愛らしげな笑みを漏らし、僕の頬を両手で包み込んだ。
「あなた、まだ分かってないのね。もう、あの男のことなんて、私の心には一欠片も残っていないわ。確かに以前は、恐怖と圧倒的な快楽で肉体を支配されていたけれど……あなたとの、この心身ともに完全に満たされる本物のセックスを知ってしまったら、あんなオヤジになんの未練もあるはずがないわ。これは、私の本心よ」
「……実はね、岡田の部屋で動画を見た時、君の過去を想って、胸が引き裂かれるように痛かったんだ。岡田は死んだけど、君がまだ彼の遺した快楽の亡霊に囚われているんじゃないかって、不安で仕方がなかった。僕にとって、彩香はそれだけ特別な存在なんだ。どうしても、僕だけのものとして繋ぎ止めておきたかった」
「嬉しいわ……。私のことを、そんな風に深く想ってくれていたなんて……。安心して、私は絶対にあなたから離れないから。……ううん、違うわね。もう、あなたの魔法なしには生きていけない身体にされちゃったから、離れられないのよ」
それから、僕たちは夜が更けるまで、互いの肉体と心を貪り合う濃厚な時間を過ごした。
「自家発電か……。そこまでは考えていなかったけれど、あの岡田の財力なら、備え付けられていても不思議ではないわね。実はね、私、あの7階直通のエレベーターに一度だけ乗せられたことがあるの。あなたの予想通り、駐輪場の隣にある厳重な鉄の扉から、専用のエレベーターホールに入れるわよ」
「やはり、あそこの隠しドアから繋がっているんだね」
「そう。……ねえ、もう私に対して敬語を使うのはやめてくれない? 今の確固たる主従関係から見れば、あなたは私にとって絶対的な『ご主人様』なんだから」
「ハハハ、それじゃあ、これからは『ご主人様』って呼ばせてもらおうかな?」
「ばか、調子に乗らないの。……でも、あなたがどうしても呼べって命令するなら、呼んであげてもいいわよ?」
「いいよ。僕としては、君とはコミュニティの核として対等な関係でいたいからね」
「今はそれでいいけれど、他の女の子たちを集めて本格的なコミュニティを構築したら、上下関係は明確にするわよ。……話を戻すけれど、エレベーターホールの奥に、大型の電気系管理設備と、さらに奥へ続く重厚な扉が見えたわ。おそらく、発電施設もその中にあるはずよ」
「もしその自家発電装置が機能すれば、わざわざ外壁を登らなくても、女性たちを安全に最上階の7階へ避難させることができるね」
「ええ。私たちの要塞化計画に、決定的な道が開けたわ。これも、あなたが危険を冒して7階に登って、マスターキーを回収してくれたおかげよ。感謝しているわ、ご主人様」
それから、僕は昼間に接触した402号室の奈穂と、601号室の千里さんの話を彩香に共有した。彩香は即座に「どちらも絶対に私たちのメンバーにするべきよ」と強い賛同を示した。千里さんの圧倒的な家事能力と穏やかな人柄、そして奈穂の素直な性格と国体選手としての並外れた身体能力は、この崩壊した世界を生き抜くために、どれも最高に価値のある資産だったからだ。
ふと窓の外の景色に目をやると、街は完全に漆黒の闇に包まれ始めていた。
今夜は、このまま彩香の部屋に泊まることに決めた。離れた場所にいる雪乃姉妹の安全は気がかりだったが、先ほど奈穂の部屋から響いた嬌声に引き寄せられた大量のゾンビが、今もマンションの階下にびっしりと群がっている。暗闇の中、この密集地帯を強行突破して外へ降りるのは、あまりにもリスクが高すぎると判断したからだ。
明日、電力を復旧させれば、すべてが動き出す――。僕は彩香の温もりを腕の中に感じながら、静かに明日の作戦を練り始めた。
※少し過激な性描写や表現もありますから、ミッドナイトノベルに移行中です




