薬のテスト
僕は気持ちを切り替え、リュックから頑丈なロープを2本取り出した。それをベランダのフェンスの太い鉄柱に硬く結びつける。1本のロープには一定の間隔でいくつか結び目を作り、昇降しやすく細工した。もう1本は万が一手を滑らせた時のための命綱として、1階層分の長さに調整して僕の腰に軽く縛り付けた。
結び目をしっかりと握り締め、慎重に身体を降ろしていく。4階のベランダに無事着地すると、腰の命綱を外し、上から垂れ下がっているロープの手元を視界に目立たないよう手際よく引き上げてまとめた。
コン、コン。
402号室のガラス戸を軽く叩く。
カーテンが微かに揺れ、ゆっくりとサッシが開けられた。河合奈穂が警戒と困惑の入り混じった顔を覗かせる。僕が無言のまま冷たい視線を投げかけると、彼女はしばらく迷うように視線を泳がせていたが、やがて諦めたように呟いた。
「……入ってください」
僕は悠然と室内に足を踏み入れた。
「井上マサキだ。よろしくな」
「河合奈穂。……自己紹介はいいから、食べ物を渡してよ。約束したでしょ?」
「約束? まさか、部屋に入れただけで食料がタダで貰えるなんて思っているのか?」
「思ってないけど……っ。本当にサイテーね」
口を尖らせる彼女を見て内心で冷笑する。女子大生にもなって、この極限状態で男が何を要求してくるか、察しがつかないわけがない。
ふと室内を見渡すと、棚の上に男と親しげに写ったツーショット写真が飾られていた。
「彼氏は同じ大学の男か?」
「違うわよ、社会人。大学の部活の先輩」
「セックスは上手いのか?」
「なっ……! あなたには関係ないでしょ! 下品な人、本当に最低の男ね!」
「奈穂、お前はまだ、自分が置かれている状況のルールが分かっていないようだな。……帰ることにするよ」
僕はリュックを背負い直し、ベランダに向かって踵を返した。
「待って……っ! 話す、話すから! ……たぶん、普通よ。他の人と付き合ったことないから、比べようがないの」
「フェラはしたことがあるか?」
「あるわよ。……舐めることでしょ?」
「そうだ。男のチンポを口で愛撫することだ。それなら、今日はそれをしてもらう。きっちりやり遂げたら、これを置いていってやるよ」
僕は机の上に、サトウのご飯と缶詰のストックをいくつか並べた。ライフラインのうちガスはまだ止まっていない。お湯さえ沸かせば、すぐにでも温かい食事が摂れる。
――その瞬間だった。
ドンッ、ガシャーン!
激しい衝撃とともに、僕の身体は背後の壁へと吹き飛ばされていた。あまりの衝撃に、飾られていた小物がいくつか床に落ちて派手な音を立てる。
リュックを下ろしてズボンを下げようとした一瞬の隙を突かれ、奈穂に体当たりを食らったのだ。
(流石は現役のアスリートだな……)
その鋭い踏み込みとダッシュの速度には、僕の反射神経でも反応しきれなかった。だが、その並外れた身体能力を確認できたことで、彼女を外へ連れ出しても足手まといにはならないという確信が持てた。
「何がフェラだけよ! リュックの中に、そんなエッチなオモチャまで仕込んでるじゃない!」
衝撃で少し開いたリュックの隙間から覗く、岡田の部屋から回収したバイブやローションを見つけ、奈穂が顔を真っ赤にして叫んだ。
「これは上の階で見つけた戦利品だよ。使ってほしいのか?」
「バカなこと言わないで! 悪いけど、この食べ物は貰っておくわ。早く出ていって!」
ご飯のパックを抱え込み、必死に僕を睨みつける。なるほど、体育会系の性質なのか、目先の食料に目が眩んで先のことを見通す思考力が足りていないらしい。
「お前、それで今日の飢えは凌げるだろうけど、明日はどうするんだ? 明後日は? 一週間後は? ……今、その食料を強奪するなら、僕は二度とお前に食料を運ばない。だが、僕の言うことを聞くなら、明日からも生きていくだけの食料を保証してやる。どうする?」
僕の冷徹な宣告を聞き、奈穂は自分の腕の中にあるご飯と缶詰を見つめた。これを食べ尽くしたあと、餓死するしかない未来を想像したのだろう。彼女はしばらく一人でぶつぶつと呟いていたが、やがて潔く、僕に向かって深く頭を下げた。
「……ごめんなさい。乱暴なことをして、すみませんでした。あなたの言う通りにします。でも、お願い……セックスだけは、絶対にしないで」
「約束を守るなら、今の無礼は許してやるよ。……そうだ、まずは食事にしたらどうだ? 腹が減りすぎて頭が回らないんだろ?」
「え……? はい、食べたいです……っ」
奈穂は弾かれたように立ち上がると、手際よくお湯を沸かし、ご飯と缶詰を温め始めた。
「あぁ……美味しい、すごく美味しい……っ」
本当に飢えていたのだろう。国体に出るほどの身体を維持してきた彼女にとって、この飢餓は地獄だったはずだ。見る間にパックのご飯と缶詰を平らげ、名残惜しそうに空の容器を見つめている。
「これも食べるといい」
僕はリュックから、ビスケットの箱を取り出して手渡した。
「えっ、いいの!? ありがとうございます……っ」
先ほどまでの敵意が嘘のように、彼女は少女のような笑みを浮かべてビスケットを頬張り始めた。実に対処しやすい性格だ。
「部活は何をやっているんだ?」
「水泳です。自由形をやっていて、国体にも出たことがあります」
「凄いじゃないか。水泳か、どうりで均整の取れた見事な身体をしているわけだ」
ジャージ越しでも分かる、引き締まったしなやかな四肢を舐めるように見つめると、彼女はハッと我に返り、自分の身体を隠すように腕を組んだ。
「……優しい人かと思ったのに、やっぱり下品でエッチなんですね」
「ああ、早くお前に奉仕してほしくてな。奈穂だって、彼氏と会えなくて欲求が溜まってるんだろ? 自慰用にバイブくらい持ってるんじゃないのか?」
奈穂は室内の棚を一瞬チラリと盗み見てから、大袈裟な身振りで否定してみせた。
「そんなわけないでしょ! 井上さんと同じにしないで。私、性欲なんて全然ないから。フン!」
「男を前にして『毎日オナニーしてます』とは言えないもんな。そういうことにしておいてやるよ」
「何よそれ! 本当に違うんだから!」
会話をしていてよく分かったが、この河合奈穂という女は極めて嘘が下手だ。隠し事が苦手で、思ったことがすべて顔や態度に出てしまう。
「そろそろ本題に入ろうか。こっちに来い」
「……わかった。でも、約束して。絶対に、最後まで入れないって」
「お前が自ら『入れて』と了承しない限りは、な」
「フン、そんなこと言うわけないじゃない!」
僕はベッドの端に腰掛け、ズボンと下着を引き下げた。そして、彼女を隣に並んで座らせ、僕の肉棒を握らせた。事前に仕込んでおいた媚薬が、僕の体温でじわじわと温まっている。
「なにこれ……大きすぎる。口に入るかな……」
「彼氏のより大きいか?」
「そんなことないわよ……。直くんのは、もっと、その……かわいいから」
「キスでもするか?」
「それはダメ! 好きな人としかしたくないから!」
「なら、早く舐めろ。ほら」
躊躇している奈穂の引き締まった後頭部を優しく掴み、僕の質量を彼女の唇に押し当てた。彼女は一瞬身を強張らせたが、意を決したように舌を伸ばし、ペロペロと不器用極まりない手つきで舐め始めた。
経験が浅いのか、ただ肉棒の表面を転がすようなぎこちない愛撫で、射精には程遠い小刻みな快感しか伝わってこない。
「彼氏にやるみたいに、もっと奥まで咥えろよ」
「はむっ……んぐ、大きすぎるのよ、喉がウッてなる……っ」
無理やりに喉の奥まで押し込み、何度も熱い呼吸を吐き出させる。――行為が始まって5分ほど経った頃、奈穂の肉体に明らかな「変化」が現れ始めた。
先ほどまでは僕の身体に触れることを極力避けるように強張っていた彼女の肌が、微かに熱を帯び、僕が何気なく彼女の引き締まった太ももや胸の膨らみに手を伸ばしても、拒絶する力を失っていく。代わりに、掠れた艶っぽい喘ぎ声が彼女の口から漏れ出した。
「あっ、ダメ……触っちゃ、やだ、あん……っ」
「奈穂、お前、おマンコがもうベトベトに濡れてるぞ」
「はぁ、はぁ……熱いの、身体が、すごく熱い……っ」
呼吸が荒くなるにつれ、僕の肉棒の表面から揮発した媚薬成分が、彼女の鼻腔と口腔の粘膜から劇的に吸収されていく。
(岡田の推論は、完全に正しかった……!)
「熱いなら脱げよ。手伝ってやるから。水泳選手なら、裸を見せるくらい恥ずかしくないだろ?」
ジャージのフロントジッパーを引き下げ、肩から剥ぎ取るように脱がせていく。彼女は抵抗するどころか、トロンと潤んだ瞳で僕を見つめ、なすがままに衣服を預けてきた。真っ赤に染まった頬と虚ろな視線は、完全に薬物によって脳の理性を麻痺させられたメスのそれだった。
「はぁ、だめ……さわっちゃ、だめぇ……」
「乳首をこうしてグリグリされるの、どんな感じだ?」
「あっ……気持ちいい、乳首、すごいっ……だけど、ダメなの、直くんしかダメなのにぃ、はあん!」
口から発せられる拒絶の言葉とは裏腹に、彼女の肉体は僕の指先の愛撫に敏感に反応し、ビクンビクンと快感に身を震わせている。
「なんで……なんでこんなに気持ちいいの……っ」
「それはね、僕の技術が素晴らしいからだよ。奈穂、君と僕は身体の相性が最高なんだ」
「相性が……いいの? あっ、熱い、奥が熱い……」
「そうだよ。このまま僕の大きなチンポを入れたら、もっと気持ちよくなれるよ?」
「それは……ダメ、ダメなのぉ……裏切れないっ」
我慢の限界は近そうだった。一度、完全に脳の防壁を破壊してやる必要がある。
しなやかな背中のラインに沿って手を滑らせ、ジャージの下のショーツごと、一気に足元まで引き抜いて脱がしてやった。
「はあああん、見えちゃう、アソコが……っ! あっ、指が入ってる、ねえ、入ってるよぉ!」
「チンポじゃないから約束違反じゃないだろ? もっと気持ちよくしてやるから」
溢れ出た愛液で濡れそぼる秘割に指を差し込み、執拗にクリトリスを責め立てる。
「あっ、そこ、あ、あ、あっ、あっ、嫌ぁ! 何か来る、くる、あっ、ああああ、んっ、んぅぅっ!」
ビクンビクンと引き締まった腰を大きくのけ反らせ、奈穂は激しく絶頂に達した。完全に放心状態となり、おねだりするように口を半開きにして荒い息を吐き出している。
思考能力が完全に停止しているその隙を見逃さず、僕は彼女の長い脚を左右に大きく開かせ、正常位の体勢で覆い被さった。溢れ出る彼女の愛液を、僕の肉棒の亀頭にこれでもかと擦り付ける。
「はぁ、はぁ……ダメよ、入れないで……約束、したよね……っ」
「ああ、約束は覚えているよ。だから僕は、このまま君が『入れて』と言うのを、ここでじっと待つよ」
「そんな……あ、あん、熱いのが、擦れて……っ」
じらすように亀頭でそこを弄りながら、僕は覆い被さって彼女の唇を奪った。激しく舌を差し込むと、彼女は待っていましたとばかりに、僕の舌に自らの舌を狂おしく絡ませてきた。
「はむっ、んぐぅ……っ。キスも、上手いのね……頭が、蕩けそう……」
「ほら、入れるぞ」
「えっ、あっ……あああ!」
先端の亀頭だけを割れ目に少しだけ沈め、完全に挿入する手前の、最もじれったい位置で動きを止めた。至近距離で、お互いの視線が交差する。
「彼氏とのセックスで、こんなに感じたことはないだろ?」
奈穂は虚ろな目を向けたまま、コクりと小さく頷いた。
「この熱いので奥まで満たして、もっとめちゃくちゃに感じさせてほしいだろ?」
コクり、と再び首が動く。
「それなら、素直になって自分からどうしてほしいか言葉に出して言えよ。言わないなら、このまま抜いて部屋を出ていくぞ」
「……ほしい。入れてください、欲しいんです……っ! あっ、すごい、熱いのが奥まで、いっぱいに……! ああ、ヤバい、気持ちいいぃ!」
根元まで一気に突き入れると、奈穂の身体が歓喜の悲鳴とともに跳ね上がった。
「ほら、認めろよ。僕は上手いだろ? 最高に感じるだろ?」
「はい、すごいです……っ、あっ、奥の、一番痛いところに届く……っ」
「もっと気持ちよくなれる魔法の方法、教えてほしいかい?」
「もっと……? 怖い……でも、教えて、ほしい……っ」
最奥の子宮口をグリグリと刺激していた肉棒をあえて一度引き抜き、浅い入り口付近だけを意地悪くまさぐる。
「僕の名前を呼んで、『好き』って言ってごらん」
「あなたなんか……好きじゃ、ありません……っ」
「嘘でもいいから、言ってみろよ。それだけで、お前の身体はもっと気持ちよくなるぞ?」
「本当に……? ……井上さんが、しゅき……はああ、好き! ああ、好きっ、井上さん好き、大好きっ! はあああ、すごい、気持ちいいい! 井上さん好きです、はあああん!」
彼女が「好き」と口にするたびに、腰を深く叩きつけ、猛烈な勢いで最奥を突き上げてやった。ここまで精神の防壁を蕩けさせてしまえば、あとはどんな命令でも従わせることができる。
「気持ちいいだろ?」
「はい、井上さん好き、大好き、はあん……っ! でも、もう、おねがい、止まらないで連続で激しくしてぇ……!」
「よし、それなら、僕を好きと言った後に、嘘でもいいから『直くんより好き』と言ってごらん」
「それは……っ」
一瞬、彼女の脳裏に現実の彼氏の顔がよぎったのか、動きが鈍る。
「嘘でもいい、今だけの言葉でいいから言え」
「今だけ……今だけですからね……っ! 井上さん好き、あん、なおくんよりも、あ、圧倒的に好き……はああ、大好き! 直くんより、井上さんの方が大好きです! ああああ、頭がおかしくなる、あああ!」
「よく言えたね、良い子だ。……そろそろ出すよ。君のあたたかい中が一番気持ちいいから、奥に全部注ぎ込んであげるね」
「えっ、だめ……好き、大好き、直くんより大好きぃっ! あッ、はあああ、んっ、イく、イぐぅ、んんんっ! はぁ、はぁ……熱いのが、お腹の中に溢れてる……っ」
引き締まった腹筋がビクビクと波打つ中、僕は彼女の最奥へと容赦なく熱い精液をすべて吐き出した。
これ以上やれば奈穂の精神の回路が完全に焼き切れてしまいそうだったため、僕はそこで行為を終えた。彼女は激しい呼吸を乱したままベッドに力なく倒れ込んでいたが、僕は声をかけることもなく身支度を整え、そのまま彼女の部屋を後にした。
※少し過激な性描写や表現もありますから、ミッドナイトノベルに移行中です




