岡田の動画
僕はまず【601】のフォルダを開き、2つある動画ファイルのうちの1つを再生した。
『奥さん、万引きは犯罪ですよ? 私にはコンビニのオーナーとして、これを警察に届ける義務があるんです。まずは旦那さんに連絡させてもらいますから、連絡先を教えてください』
『待ってください、違うんです! わたくしは万引きなんてしていません。後から思い出したのですが、あの時バイトの学生さんが私のバッグに入れたんだと思います。カメラで確認してください!』
『それがねえ奥さん、数日前にパソコンのトラブルで監視カメラのバックアップが消えちゃいましてね。調べるのは不可能なんですよ。それより、ここに奥さんが罪を認めた念書があります。これは奥さんの自筆ですよね?』
『はい、それはわたくしが書きました。でもそれは、店長さんが「初犯だから、これを書けば主人にも警察にも通報しない」とおっしゃったからで……』
ドンッ、と激しい音が響く。
『そんなことはどうでもいいんだよ! あんたは万引きを認めたんだ。これがその証拠、もう言い逃れはできないんだよ、分かるか!?』
『はい……。でも、お願いします。主人にだけは……っ』
『仕方ないですねぇ……』
画面の中の岡田はそう言うと、カチャカチャとベルトを外してズボンを脱ぎ捨てた。
『えっ、岡田さん……どうしてズボンを……』
狼狽する千里を無視して、岡田は躊躇なく素っ裸になった。そして、彼女が座るソファの隣に腰掛け、口調をガラリと変えて凄んでみせた。
『おら、奉仕しろや。口で許してやるからよ』
『そんなこと、できません……っ』
パーン、と乾いた衝撃音が室内に響く。
『うるせえ! お前が悪いんだぞ! 素直に認めて謝らねえからだ。万引きは犯罪なんだよ! 犯罪者に人権はねえんだ、おら、舌を出して舐めろや!』
頬を張られて呆然とする千里の髪の毛を掴み、岡田は強引に自らの股間へと彼女の顔を押し付けた。
『嫌です……っ』
バシン、と再び鈍い音が響く。
『おら、早く舌を出せ! お前が悪いんだからな! 舐めるまで殴り続けるぞ』
『痛い、ううう……っ』
観念したように、ペロッ、ペロッ、と千里の舌が動き始める。岡田はニヤリと下卑た笑みを浮かべ、カメラに向かって親指を立ててみせた。
5分ほど奉仕させると、岡田は髪を引っ掴んで千里の顔を強引に上げさせた。
『ああ、はぁ、はぁ……っ』
『なんだあ? チンポ舐めて興奮してんのかよ。清純な奥さんかと思ったら、とんだスキモノじゃねえか』
画面の中の千里は、頬を林檎のように紅潮させ、視線も虚ろになっていた。その瞳は完全に発情している。それからはもう抵抗らしい抵抗もせず、岡田に衣服を剥ぎ取られて犯されていた。まるで別人のように、貪欲に快楽の泥沼へと堕ちていく。
もう1つの動画は、岡田と店長の2人がかりで千里を狂わせている映像だった。この動画でも彼女は最初こそ拒否していたものの、ある瞬間を境に人格が変わったように、2人の男に貪り尽くされて激しく喘いでいた。
あの淑やかで上品そうな奥さんが、こんな醜悪なオヤジたちに弄ばれていたなんて――。
動画の中の千里は明らかに男たちを受け入れ、自ら快楽を求めて悦んでいた。しかし、先ほど僕と話した時の彼女の様子からは、岡田や店長に対する激しい嫌悪と憎悪しか感じられなかった。
(気持ちが、恐怖と快楽に負けてしまったのだろうか……?)
女が快楽に弱い生き物だということは理解している。しかし、千里のあの豹変ぶりは、単なる肉体の開発とは何かが決定的に違うような違和感があった。
僕は複雑な胸中のまま、次に【301】のフォルダへとマウスのカーソルを合わせた。
クリックするまでにしばらく逡巡したが、現在のパートナーである彩香の過去だけは、どうしても知っておきたかった。
301フォルダの中には、3つの動画ファイルと、さらに新しいフォルダが1つ収納されていた。
意を決して最初の動画ファイルを開く。彩香が岡田に犯されているかもしれないという想像だけで、心臓が爆発しそうなほど高鳴った。
だが、画面に映し出されたのは、ベッドで泥のように眠っている見知らぬ女の子を、岡田が一方的に犯している映像だった。何らかの薬物を盛られているのか、女の子は完全に意識を失ったままで、何の反応も示さない。
「これは……彩香じゃない」
顔のアップを確認し、僕はホッと深く胸を撫で下ろした。おそらく、彩香がこの部屋に入居する前に住んでいた前住人の女の子なのだろう。他の2つのファイルも、同じ女の子が被害に遭っている映像だった。
「彩香が被害に遭っていなくて、本当に良かった……」
安堵の溜息とともに独りごちた僕は、何気なく残された「新しいフォルダ」を開いた。
その瞬間、心臓が凍りつき、胸を鋭利な刃物で締め付けられるような激痛が走った。
「そんな……嘘だろ、彩香が……っ」
そこには、彩香が岡田に犯されている動画が、信じられないほどの数、整然と収納されていたのだ。
最初の動画――彩香の寝室に合鍵を使って忍び込んだ岡田が、眠っている彼女の鼻先に怪しい液体を垂らしていた。それから無防備な部屋着を剥ぎ取り、様々なアングルから写真を撮影し、ローションを浴びせるように塗って彼女の肉体を蹂躙していく。
先ほどの女の子の動画に比べ、彩香の映像は異常なほど丁寧に、執拗に撮影されていた。岡田も、あの美しく気高い彩香を特別に気に入っていたのだろう。
次の動画は、岡田の車のドライブレコーダーの映像のようだった。音声は酷く聞き取りづらかったが、2人の挙動で内容の見当はついた。
スマホの画面を突きつける岡田に対し、彩香は顔を青ざめさせ、何度も「消して」と懇願している。おそらく、先ほどの隠し撮り動画を盾に脅されているのだ。その後、動画の消去を条件に強引に口淫を強要されていた。
だが、彩香も千里と同じだった。しばらく岡田の肉棒を咥えているうちに劇的に豹変して発情し、自ら進んで後部座席のベッドへと這い上がって岡田を求めたのだ。
ただ、他の女の子と決定的に違っていたのは、行為が終わったあと、岡田が彩香に分厚い現金の封筒を手渡している点だった。
岡田は彩香に異常なまでに執着していた。マンションの寝室、ベランダ、バスルーム、果てはどこかの公共施設のトイレに至るまで、あらゆる場所で彼女を貪り、彩香もまた、狂ったようにその肉体に依存していた。
――これは僕が彩香と出会う前の過去の出来事であり、何より岡田はすでに死んでいる。頭では分かっているのに、やるせない嫉妬と怒りが泥のように胸に沈殿していく。それと同時に、画面の中で乱れる彩香の肢体に、ひどく興奮してしまっている自分自身に強烈な嫌悪感が差した。
僕は元カノの京香が青山の腕の中で喘ぐ動画を見た時も、心が引き裂かれるような絶望を抱きながら、同時に狂おしいほどの性的興奮を覚えていた。
(僕は、どこか狂っているのかもしれない……)
自嘲気味に息を吐きながら、僕はいくつかの動画を早送りで検証し、ある一つの「共通する奇妙な現象」に気づいた。
どんなに激しく拒絶していた女も、岡田の肉棒を口に含み、しばらく咥えさせられると、例外なく劇的に発情しているのだ。
(まさか……岡田の奴、自分の肉棒に直接『媚薬』を塗り込んでいたんじゃないか……?)
そうでなければ、あの淑やかな千里や、プライドの高い彩香の劇的な豹変に説明がつかない。彼女たちは、自らの意思ではなく、粘膜から強制的に過剰な媚薬を吸収させられ、脳の回路を狂わされていたのだ。
この推論を確かめるため、僕は岡田のサイドボードから回収した媚薬の瓶を開け、自らの肉棒に少量を塗り込んでみた。
じわじわと、まるで強いアルコールを塗られたような熱い刺激が走る。しかし、それによって僕自身の性欲が異常に高まるようなことはなかった。やはりこの薬品は、経口摂取による粘膜吸収でなければ、劇的な効果を発揮しない性質のもののようだ。
「601号室か、402号室か……。――いや、今は402号室だな」
601号室の若宮さんを今すぐ襲う気にはなれなかった。あんなに気立ての良い上品な奥様が、岡田と店長の卑劣な罠によって 玩具のように消費されていた事実を知り、ただただ不憫に思えたのだ。
※少し過激な性描写や表現もありますから、ミッドナイトノベルに移行中です




