第91話
「我が父と、あの枢機卿の権能との相乗効果によるものと考えます。
それで、あの枢機卿はいかがなさいますか?」
「それなりに、高位の枢機卿だが、あれは、俺が知る“次席”ではないな。
それにしても、僭称しておる者ばかりだな」
「ええ、皇帝を僭称する皇兄殿下、宮中伯を僭称する我が父、次席枢機卿を僭称する席次下位の枢機卿、ああ、それから、北の大公を僭称している公子もおりましたな。これも、欲に目が眩んだ兄殺し……。
皆、夥しい聖女の皆様方を害した、“ろくでなし”でございます」
「もはや、罪を自覚させるのも無駄な輩だ。
伯父上だけを残し、他は一気に排除してしまおう。
さて、急な招集にもかかわらず、皆、馳せ参じてくれたようだ」
「!?」
「さあ、伯父上以外の者達を解除せよ!」
解除した途端、瞬時に、ジークフリートは、強力な権能で、皇兄以外の者達を一気に宝玉に吸収してしまった。
吸収された者達は、まったく自覚する暇もなかったはず。
そして、ほぼ同時に、ジークフリートは、シャイデマンと皇兄を自身と共に転移させた。
気づくとシャイデマンは、帝都宮殿の玉座の間の中央にいた。
そして、目の前で、バーデン辺境伯が皇兄を粗末な椅子に、乱雑に座らせていた。
正面の玉座は、空席であるが、その傍らに、先程まで、すぐ近くにいたはずのジークフリートが立っていた。
そして、玉座から一段下の両脇には、帝国の両翼、ブラウンシュヴァイク大公とエッペンシュタイン大公が、その更に一段下には、フェンビュッテル伯爵(大公領宰相)と、公世子(ボンブルク=エッペンシュタイン大公家)が、それぞれの主の傍に控えていた。
その玉座から二段下のステージの両脇には、ミュッケンベルガー元帥(帝国軍総司令)が立ち、その対称となる位置に、バーデン辺境伯が向かって歩いていた。
そして、後方には、帝国の重臣である宮中伯や、軍の高官などが勢揃いしていた。その中から、近衛卿のハウザー宮中伯が一歩前に進み出て、手にしていた詔勅を読み上げる。
「勅命である。
汝、皇帝陛下を弑逆し、帝国の秩序を乱したる罪、断じて許し難し。
さらには、皇帝を僭称し、皇弟殿下に己が罪を被せ、召喚した人外の者に差し出した。
また、皇后陛下をはじめ、多数の聖女様方を、その人外の者に糧として供しつつ、汝は、それを上回る夥しい聖女様方を辱めた上で害した。
これらは、万死に値する。
よって、汝を捕縛し、その身柄を御前へ差し出した者たる内務卿に、その刑の執行を命ず」




