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エバー・ア・ソード・フォー・ローゼズ  作者: deki
本編2

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第90話

「待たせたな」


 ロレーヌ公国公都大聖堂に再び戻ったジークフリート。


「いえ、まったく問題ございません。

 それで、アビゲイル様は、なんと?」


 内務卿シャイデマン宮中伯は、強力な権能を行使しながら、まったく気にしていない様子。


「お前は……。

 よく使命を果たした、後で褒めると。

 それから、卿の権能を絶賛していたな。

 歌姫殿も改めて会ってお礼したいと」


「おおお!

 なんと光栄なこと!!

 またお会いすることができて、直接お褒めの言葉も頂ける機会が得られるとは……」


 感動に打ち震えているシャイデマンを呆れた目で見る、ジークフリート。


「そもそも、アビーには、大公領で頻繁に会っておるではないか……」


「それは、それで、別なのでございます。

 ああ、アビゲイル様!

 それに、歌姫様まで……」


「いい加減にしないと、卿の母に言いつけるぞ!」


「そ、それは困ります。

 とても、とても、やきもち焼きなので……」


「わかっている。

 わかっていて、言っているのだ。

 さて、さすがに、卿の母の、今(・)は(・)失(・)わ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)が、その気持ちを考えれば、卿に父親を誅させるわけにはいかぬ。

 そこは、俺に任せよ」


「で、殿下。しかし、是非とも我に……」


「その代わりに、卿には、皇帝を僭称《せんしょう》している伯父上を誅してもらおう。

 そもそも、帝国での聖女達の受難は、伯父上が元凶なのだからな。


 卿には、その功を持って、我が帝国の宰相に就いてもらう。

 良いな、その覚悟を持って、本懐を遂げよ。


 卿の母も、それならば、本望だろう」


「我が母の本望……。

 承知いたしました。

 そのような過分なご配慮くださり、恐悦至極に存じます。

 それにしても、イーゼンブルクは良いのですか?」


「それこそ、資質は十二分にあっても、資格がない。


 堅牢な貴族意識が支配している帝国では、この短期間に、元平民で、いまだ陪臣の立場から宰相になど、とても無理な話だ。

 無駄に苦労するのが目に見える。


 それに、あいつには、将来、南を任せるつもりだ。

 その方が、あいつも都合が良いしな。


 無論、卿を軽んじているのではないぞ。

 卿も資質は十二分にある。

 しかし、そもそも、卿でも、かなり無理筋な話なのだからな」


「承知いたしました。

 まあ、イーゼンブルクには、しばらくは、殿下の傍で励んでもらわねばなりません。

 さすれば、出自によらず、元平民からも有能な人材を登用しやすくなります」


「そのためにも、貴族出身の卿が諸施策を実行することに意味が出てくる。

 頼んだぞ」


「承知しました。

 しかし、まだ事が済んでおらぬのに、気が早い話ではございますが……」


「ハハハ、たしかにな」


 ジークフリートは笑った。

 しかし、表情を引き締める。


「それにしても、いくら帝国中を探しても見つからぬわけだ。

 まさか、ここに潜んでいたとは……」


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