第84話
控室で、皆が扉の奥に一礼をした後、ロレーヌ公が近衛騎士団長を断罪、筆頭近衛騎士長に処刑を命じ、すでに実行されたことを重臣達に告げた。
そして、筆頭近衛騎士長を、この緊急事態の鎮圧責任者に任命し、直ちに、造反貴族の関与する政務中枢施設や、彼らの公都邸の封鎖を命じた。
その後、重臣達とともに、ロレーヌ公は、建国祭の開会式会場である公宮大広間に移動した。
そこで、建国祭参列者に、公世子に決まったフリードリヒ公子を紹介した。
参列者は、皆、大変驚いた。中でも、何も知らされていなかった公国の貴族達の衝撃は大きかった。
また、フリードリヒ公子の対抗馬であったバスティアン公子はもとより、バスティアン公子の支援者で、有力者のザルム侯以下、彼の派閥に属す重臣達が揃って参列しない事態にも動揺したが、ここは、諸外国の貴賓も参列する建国祭。
高位貴族の矜持として、皆、表向きは平静を装った。
しかし、参列していない重臣の縁者達は、内心、大変戦慄していた。
そして、さらなる衝撃的な宣言がロレーヌ公によってなされた。
建国祭の開会式は、宰相が会場に向かって式辞を述べた後、まずは、教皇国に敬意を表し、公都大聖堂の大司教が教皇からの祝辞を代読することから始められることになっていたのだが、ロレーヌ公が突然、それを制して、教皇国との断交を宣言し、大司教以下、マクシミリアン教関係者の退席を命じたのだ。
しばらくの間、ロレーヌ公を睥睨していた大司教であったが、不敵な笑みを浮かべつつ、関係者を引き連れ、会場を後にした。
そして、建国祭が進行するにつれて、徐々に参列者の一部が姿を消していった。
さすがに異変に気付いた者が出てきたところで、当初の予定よりも早く、終了することとなり、ロレーヌ公とフリードリヒ公子、諸外国の貴賓達は、散会となった。
そして、国内の貴族のみが残った段階で、宰相ビドガワ伯により、事態の概要が説明された。
その後、二手に分かれた出口に向かう貴族達。その出口によって、今後の運命が決まる。絶望してその場に蹲った者も多くいたが、近衛兵に連行された。
一方、鎮圧責任者を拝命した筆頭近衛騎士長ダンツィヒ卿は、直ちに、近衛騎士団はもとより、憲兵隊や公都常備軍の予備兵力も招集し、鎮圧部隊を複数組織し、一気に造反貴族を制圧した。
なお、建国祭が開催されていたこともあり、公都を兵達が多数出歩いても、一般市民達は、誰も疑問に思わず、混乱はまったくなかった。
ただし、公宮の中枢施設や貴族街では、多少の混乱は認められた。
しかし、上位貴族であればあるほど、皆、当主とその家族が建国祭の開会式会場である公宮大広間に参列していたため、抵抗はほとんどなく、この電撃的な制圧劇は、その日の夕方には、完全に終幕した。




