第82話
「なんだ、貴様は?
一介の近衛騎士の分際で……、そこに控えよ!」
これまた、先程聞いたセリフ。
一気に、興味を無くした様子のジークフリートに、逆に、激昂する近衛騎士団長。
「な……、礼儀を知らぬ者よ!
ダンツィヒ卿、団長命令だ。
その不届き者を、我に引き渡せ!
それから、卿も分不相応なものを持っているな。
それも後で我に引き渡せ!
良いな、これも団長命令だぞ!」
無言で近衛騎士団長を睨みつける、ダンツィヒ卿。
「何をしておる。
団長命令だと、言っておるだろうが……」
こんな男が、近衛騎士団長だったとは……。
この場に居た者は、皆、絶望した。
しかし、それをそのまま口にした者がいた。
「こんな男が近衛騎士団長だったのか……。
ダンツィヒ卿よ、卿のことだから、その“団長命令”に妄動しておったのだろう。
よく考えよ。公家の剣である卿に、白を黒と言っても良いのは、君主のみ。
そのような輩の言うことなどに従う必要はまったくない。
それに……。
イーセンブルクを介して伝言があった。
近衛騎士団長は、たった今、解任された。
これは、殿下直々のご命令だ」
「な、なにを……、馬鹿な……」
「そもそも、君主の危機に、今頃、”のこのこ”と現れて、どういうつもりだ。
まずは、君主の安否を気遣うのが当然であろう。
なのに、貴様は、なぜ、最初から、君主が討たれた前提で話しているのだ」
「おい、近衛騎士達よ。
あの男を成敗せよ!
これは、団長命令だぞ!」
しかし、部屋の中にいた、近衛騎士達は、誰も動かない。
だが、団長の取り巻き達は違った。
「おい、先程から、団長殿がご命令されているだろうが!
なにをしているんだ!」
「殿下、あれは、近衛卿の子弟達や、その一族にゆかりの者達です」
と、ダンツィヒ卿の娘である、近衛騎士のグレタが、ジークフリートに説明する。
「ならば、同罪だな。
ロレーヌ公のご命令だ。成敗せよ!」
「御意!」
ダンツィヒ卿が神速で、近衛騎士団長と、その取り巻きの騎士達、計6名の間を駆け抜けた。
「な、なにを……、ああああ……」
近衛騎士団長の分厚い鎧に切れ目が現れ、胴がゆっくりと、ずり落ちてくる。
他の取り巻きの騎士達も同様だ。
そして、確かに刃こぼれなく、また、血も付かず、光り輝く剣を、その鞘にダンツィヒ卿が収めた瞬間、近衛騎士団長ら6名は、全身から光を発し、程なく全員霧散した。
「恐ろしい切れ味でした。殿下、我は、生まれ変わった!」
それが、この聖剣本来の力。
これは、真に聖剣に認められぬと発現できない、まさに、神の力。
先の世では、鞘から引き抜くことはできても、この真の覚醒までには到達できなかったジークフリートは、心の中で、師に向かって言った。
(それでこそ、わが師。まだまだ、師には遠く及ばぬ……)




