第80話
すぐさま、ロレーヌ公とイーセンブルク卿は、バーデン辺境伯に連れられ、この部屋から転移した。
一人、部屋に残る筆頭近衛騎士長。
程なく、目の前に、ジークフリートが現れ、いきなり、筆頭近衛騎士長に強烈な一撃を浴びせた。
間一髪、高度な剣捌きで凌いだ筆頭近衛騎士長。
「殿下、これはどういうことですか……、な、なにを!!」
さらに追撃するジークフリート。これは、すぐに捌くが、これほどの技量の者とは対峙したことがなく、戦慄する筆頭近衛騎士長。
警戒を強めた筆頭近衛騎士長だったが、ジークフリートは、そこで、刀を下ろし、目を細めて筆頭近衛騎士長を凝視した。そして……、
「なんだ、心配したではないか。
まさか、卿がその程度かと……。
やはり、潜在的な技量は、卿が遥かに上。
なのに……、なにをそんなに縮こまっているのか!
そんなことだから、大事な者の危機をみすみす見逃すのだ!!」
激昂するジークフリート。
「よいか、ダンツィヒ!
俺がしっかり解放してやる!
師が弟子に敗れるには、まだまだ早いはずだ!!」
ジークフリートの激昂を聞き、室外で待機していた近衛騎士達が入ってきた。
いきなり、目の前で繰り広げられる、とんでもなく高度で強烈な剣の攻防に、皆、目を奪われた。
「いつまで、防戦しているつもりだ。
反撃せよ。
よいか、卿は舐められているのだぞ!
あの程度の人数で、卿が守るロレーヌ公をどうにかできると、侮っていたのだぞ!」
さすがに、防御に徹すれば、なんとか捌けるが、とても反撃できる余裕はないと考えていた筆頭近衛騎士長は、一瞬、この戦いを見ていた娘のグレタに目を奪われた。
「よそ見をするとは、余裕だな!」
なんとか斬撃を防いだ筆頭近衛騎士長。
戦いの最中だというのに、別のことに気を取られるとは……。
ここで、冷静さを取り戻した。
それと同時に、体の奥からは、この上ない喜びが湧き出てきた。
「殿下の剣には、懐かしい我が朋、今は剣聖と呼ばれるパルジファルが感じられる。
しかし、それを土台としつつ、なぜか、我が剣技も。
殿下と対峙したのは初めてですが、パルジファルから、なにか授けられましたかな?
それにしても、我と剣を交えていた当時から天才であったパルジファルも、その頃は殿下と同年代でしたが、これほどの技量はなかった。
我が生涯で、これほどの剣技と相見えることができようとは……」
「ハハハ……。
ようやく、本来の卿に戻りつつあるようだ。
では、これを最後としよう。
仕上げも、もう少しで到着するようだしな……、
いざ!!」




