第71話
「宰相閣下、重臣の皆様、大変でございます。
公女殿下の離宮が襲撃に合い、現在、近衛騎士達と交戦中とのこと。
そこに、公女殿下の見舞いに訪れておられた殿下が巻き込まれた模様です」
「な、なんだと!」
それを聞いた重臣達は騒然とした。
しかし、すぐに、ビドガワ伯は後悔した。
まさか、このような暴挙に出るとは、と。
警備がとりわけ厳重な公女離宮を襲撃しても、容易に成功するとは思えない。
しかも、深夜にロレーヌ公から沙汰が下されたばかり。
しかし、中立派の二人を取り込んだのなら、話は別だ。
だが、彼らは、イザベル公女を擁護していたのではなかったのか……。
混乱する控室では、近衛卿と侍従長が自らの不備を詫びるなど、ビドガワ伯から見れば、茶番劇としか言いようがない、やり取りがなされていた。
近衛卿と侍従長は、不備を詫びながらも、そこまで動じているようには見えない。
ロレーヌ公の身を案じる、ビドガワ伯。当然、援軍を差し向けているはずだが、とても間に合うとは思えない。
苦々しく、近衛卿と侍従長を睨む。
しかし、状況から、疑わしいことは明白でも、証拠があるわけでもない。
それでも、ビドガワ伯は、近衛卿と侍従長を厳しく叱責し始めた。
それが事態解決につながることはないとは承知しつつも、そうせずにはいられなかったのである。
しかし、叱責を受けた二人は恐縮しつつも、どこか余裕を感じさせる素振りを見せた。
これには、さすがに陰謀があったことを悟った宰相派の重臣達も黙っておられず、次々と叱責に加わった。
しかし、程なく、ザルム侯がそれを制した。
「ここで、彼らを叱責しても始まらぬではないか。
追って、彼らには相応の処分を下すとして、まずは、殿下の御身が無事であることを、皆で女神様にお祈りしようではないか」
「確かに、その言は正しいかもしれない。
しかし、閣下はそれを本当に心から願われるのですかな?」




