第66話
「殿下、大聖女様、シャルロッテ聖女殿、なんとお礼を言ってよいか……」
完全回復したイザベル公女を抱きしめ、涙を流しながら、感謝するロレーヌ公。
一方、まだ、何が起きたのか承知していない様子のイザベル公女は、傍らに寄り添っていた侍女のニルデに問いかけた。
「えっと……、ニルデ、いったいどうなっているのかしら。
体が信じられないくらいに、軽いの。
手足のしびれも、まったくなくなったわ……。
本当に、信じられない……」
「姫様、皆様が、力を合わせて、姫様をお救いくださったのです。
ああ、本当になんということでしょう……」
ニルデは、そこで泣き崩れた。それをオロオロしながら、なだめるイザベル公女。
その様子を皆が温かい目で見つめていた。
「なにやら、外が騒がしくなってきたようだな。
バーデン、敵の数は?」
「「「!?」」」
バーデン辺境伯以外の皆は、驚愕した。
「30名程かと。
我にお任せ頂ければ、直ちに排除いたします。
まあ、今、イーセンブルクが加減しながら、加勢しておりますので、奴をその気にするように、殿下がご指示なされば、それでも済みますが、いかが致しましょうか?」
「ば、馬鹿な……、
ここは、我が公城でも、最も厳重な警備体制を敷いている、我が娘の離宮ですぞ。
失礼ながら、殿下、何かの間違いでは……」
「残念ながら、事実です。
ロレーヌ公、教皇国の大聖堂に手引きされた者が、こちらに無理に入ってこようとしており、それを阻止すべく、貴国の近衛兵と交戦しているようです。
まあ、ご安心を。
少しだけお待ちください。
バーデン、排除は都合が悪いな。
生け捕りにするので、私が迅速に対処する。卿も、ちょっと、付き合え」
「御意」
「ジーク、大丈夫なの?」
「ああ、案ずるな、シャル。
まあ、いざとなったら、俺も、バーデンにも、転移の権能があるから。
それに、万が一、怪我を負っても、大聖女様と最高の聖女様がいらっしゃるからな」
「ダメよ、怪我なんかしたら。
絶対に許さないから!」
「シャルロッテ様、殿下はこの身に変えましても、この“鉄壁バーデン”がお守りいたしますので、ご安心ください」
「だから、ダメって言っているでしょ!
バーデンのおじ様も、怪我なんかしたら、ダメ!」
こうなっては、最強バディも形無しである。
「まあ、すぐに戻ってくるよ……」
頭を抱えながら走り出したジークフリートが、その場から消失する。
「ああ、殿下、お待ちください」
同じように、ジークフリートを追いかけようとしたバーデン辺境伯が、ふと振り返り、ロレーヌ公の傍らに控えていた筆頭近衛騎士長に声をかけた。
「ダンツィヒ、お前も一緒にくるか?」




