第63話
ロレーヌ公国の公女離宮に、大聖女ブリュンヒルデが娘を伴って降臨した。
「ええ、ご安心なさい。
我が娘も、それに、ジークもいるのだから。
ところで、ジーク、もしかして、この倒れている方も……」
帝国皇太子ジークフリートが頷く。
「そうなのね、この方も、我が”剣”と同じ……」
「しかも、どうやら、急性のものも盛られてしまったようです。
すみませんが、まずは、シャルに手伝ってもらいながら、急性の方を”無毒化”します」
「な、なんですと、殿下……」
「すまない、ロレーヌ公、詳しくは後で。
シャル、いきなり本番で申し訳ないが、この前に練習したように。
わかるな」
「ええ、大丈夫。
すみません、侍女の方。
これ、預かっていてくださるかしら」
大聖女の娘の一人、シャルロッテは、手にしていた絵筆を、侍女ニルデに手渡す。
「貴方様も絵を嗜まれるのですね。
ぜひ、姫様をお救いください。
姫様も絵を描くことが何よりもお好きな方なのです」
「ええ、お聞きしていますよ。
私も公女様とお話するのを楽しみにしていましたの。
さあ、ジーク、こちらの準備はいいわよ」
「ああ、では、俺がこれから無効化する。
どうしても、その際に体に負担がかかってしまう。
いつも以上に体の隅々まで権能が行き渡るように意識してくれ。
では、頼む」
シャルロッテは両手を広げて、その手のひらをイザベル公女に向ける。
すると、神聖な光が現れ、イザベル公女の全身を包み込む。
「いいぞ、シャル。さすがだ!」
「ええ、ありがとう。ジーク」
「では、こちらも……」
ジークフリートの手に、先程とは別の宝玉が現れる。
かなり透き通っているが、その透明な内部の中心部に、かなり小さいながら、禍々しい黒い核が認められる。
「あえて、浄化された残滓物を残しておいたことが、役に立つとは……」
その宝玉を目に当てて、その宝玉越しにイザベル公女を凝視するジークフリート。
「よし。完全に把握できたぞ。
ありがとう、シャル。
かなり持ち直してきたようだ。
ここからが本番だ」
またも、ジークフリートの頭上に、別の宝玉が現れた。
先程の宝玉を目に当てながら、ジークフリートが叫ぶ。
「いけ!」




