第60話
その場には、残った5名以外に、公宮侍医長のクスマウルと彼を補佐する侍医2名、その従者達5名、さらに、近衛騎士5名と侍女3名の合計16名がいたのだが、彼らが瞬時に消失したのである。
ロレーヌ公とニルデは、驚愕した。
「な、殿下、これは……」
「ロレーヌ公、緊急事態です。
このままでは、公女殿下の命が……。
この部屋を一時封鎖し、我が国より、聖女を連れてくる許可を頂きたい!」
「まったく異存ございませぬ、ぜひとも!」
「バーデン!
至急、ここに、シャルか、アビーを連れてこい!!」
叫んだ青年が頭上に浮かんでいた宝玉を床に置く。
すると、宝玉が再び輝き出すと、一筋の光が天井に向けて放たれた。
「ここだ!
申し訳ない、ロレーヌ公と侍女の方、少し離れていてください」
やがて、宝玉から発せられた一筋の光が消えた。
その瞬間、宝玉の光も消失したが、まもなく、再び宝玉から光が漏れ出し、やがて眩しい光となった瞬間、その場に屈強な戦士が現れた。
そして、その後ろからは、2人の女性が現れた。
「ジーク、いったいどうしたの?
お出かけする時間には、まだ早いと思ったのだけれど……」
絵筆を右手に持った少女が話しかける。
「ああ、シャル、すまない。
え、伯母上!
伯母上もお越し頂けたのですか?」
「シャルが絵を描いているところを眺めていたら、突然、バーデンが現れて、シャルを連れて行くって言うものだから。
私もご一緒させて頂いたの」
先程までの緊張感とは、まったく異なる、およそ場違いな雰囲気で話しかける女性。
しかし、ロレーヌ公と、ニルデは、瞬時に悟った。
この女性こそが、大聖女ブリュンヒルデ、その人であることを。
「ああ、大聖女様……、どうか、姫様をお助けください」
「ええ、ご安心なさい。
我が娘も、それに、ジークもいるのだから。
ところで、ジーク、もしかして、この倒れている方も……」




