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エバー・ア・ソード・フォー・ローゼズ  作者: deki
本編2

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第53話

 ジークフリートは、皇弟に寄生していた思念体の分身を宝玉に吸収後、分身と本体とのつながりを追って、思念体の本体に迫ったものの、すでに本体は消失していた。


 その場には、ほんの僅かだが、残滓があり、しばらく前まで、そこに思念体が存在していたのは間違いなかった。


 また、すぐ近くの場所に、極めて僅かだが、空間の歪みも確認できた。


 ジークフリートは、不思議に思い、あらためて思念体を吸収していた宝玉を確認すると、禍々しい色に変色していた宝玉が、本来の神々しい輝きを取り戻していた。


 宝玉に残ったのは、解放された膨大な力と小さな黒い塊の残滓物であった。


 ジークフリートが自らの権能を駆使して解析した結果、その膨大な力は、極めて大きな豊穣の権能であることがわかった。


 あのような悪意の塊の中から、豊穣という極めて有用な権能が現れるのも、奇妙な話ではある。


 豊穣から連想されるのは、女神の存在。


 そもそも、あの思念体は、女神と同じ世界から、この世に顕現したものであったのかもしれない。


 いずれにしても、宝玉によって、吸収された思念体が浄化されたものと判断された。これが思念体の本体をも消失させた蓋然性《がいぜんせい》は高い。


 しかし、思念体の本体が直前まで寄生していた人間がいるはずだが、それが見当たらないのは少し解せない。


 周辺を確認すると、不自然に放置された荷馬車があり、その中に捕らえられていた若い女性達を見つけた。


 すぐに救い出して、事情を聞いたところ、貴賤を問わず捕らえていたようで、庶民の娘達だけでなく、この領地を治める貴族の娘までが含まれていた。


 彼女達の証言から、自分達を捕らえた野盗達が自分達を置いて、逃走する旨、話していたことがわかった。


 急な方針転換であったようで、子分達は、しぶしぶ従っていた様子だったが、野盗の親玉らしき男が、かなり急かしていたとも。


 どうやら、野盗達が逃げる直前に、捕らえた女性達の中に、領主の娘がいることに、ようやく気づいたようで、そのため、急いで逃げ出したのではないかとのことだった。


 よって、野盗達は、すでに逃走したため、思念体が寄生していた者がその場には残っていなかったのだと、ジークフリートは結論付けた。


 しかし、完全に納得はしなかったのだが……。


「少なくとも、あの“悪意の思念体”の脅威は、当面は大丈夫だろう。

 俺が宝玉に封印し、本体の消失も確認したからな。

 とは言え、確率は非常に少ないとは思うものの、他にも似たようなものがいないとは限らない。

 それに限らず、不測の事態に備えておくことは、とても重要だしな」


「御意」


「まあ、念のためだ。

 ようやく、大聖堂の聖女達を救う準備も整えた今、アイーシャの重要性を考えると、伯母上や、シャル、アビーと同様の保護が必要だ。

 よって、すでに、アイーシャには、女神の権能を付与した宝玉の欠片を身に着けてもらった」


「え……、もう、あのネックレスを手渡されたのですか?

 それは、歌姫様もお喜びでしょう。

 して、アビゲイル様のご反応は?」


「……、ネックレスといっても、あくまで、護身用だ。

 それ以上の意味はない……」


「本当ですか?

 まあ、殿下がそうお思いでも、相手がどう思うかは……」


「もうよい!

 ともかく、今回の件、ロレーヌ公への説明は、卿に任せる」


「承知しました。

 して、アビゲイル様へのご説明は?」


「ん? それも、卿に任せても、良いのか?」

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