第52話
ジークフリートとイーセンブルクの会話が続いている。
「それで、歌姫様のことですが……」
「その話は終わったのではないのか? また、話を蒸し返す気か?」
「いえいえ、歌姫様への今後の対応についてのご相談でございます」
「ならば、良い。
ともかくも、アイーシャは、この段階で、しっかりと保護する。
結果として、予定よりも早めに接触できたことは良かった。
大聖堂の連中も、そろそろ、宝剣の権能が消失しようとしていることに気付く。
宝剣の権能は、俺が手にしているのだからな。
今は、わずかな権能の残滓だけで、まもなく、それも尽きる。
そうなると、権能を復活させるため、女神を召喚しようとする」
「ええ、承知しております」
「そうだったな。
卿に説明は不要か。
どうにも、さっきから、調子が狂うな……」
「女神様の召喚には、大聖女様か、多数の聖女様の生贄が必要でございます。
大聖女様には劣るとはいえ、極めて大きな癒しの権能を有する歌姫様であれば、
お一人でも、女神召喚が可能と考えるでしょう」
「実際には、大聖女の直系でなければ無理なのだがな」
「それでも、歌姫様を生贄にすれば、かなり、女神様の召喚には近づくと思われます。
短時間であれば、顕現できるかもしれません。
よって、宝剣の権能消失の危機に気づけば、歌姫様の利用価値は、一気に高まります。
これまで、アドリア王国の手に落ちることを容認していた大聖堂の連中も、方針を変更し、歌姫様確保に動くのは必定かと」
「本来であれば、すぐさま保護するつもりだったが、多数の他の聖女達まで危険にさらす訳にもいかず、万全の準備が整うまで、時間を要した。
まあ、俺も、師匠らと、それなりに妨害工作を施しておいたから、ここまで引き延ばせたし、予定通りに、アイーシャを教皇国から出国させることもできた。
ここまで来たのだ。”不測の事態”で台無しになっては、元も子もない」
「あの”蠅男”の脅威は、無くなったものと承知しておりましたが……」




