第49話
「朴念仁のフリ……」
「まあ、当時は、あのように仲の良かったお二方の一方にのみ、特別なご好意を示されるのは差し障りがあったのでしょうし、そのようなご態度をおとりになられたのも、無理からぬことかと……」
「……」
「お話を続けてもよろしいでしょうか、殿下」
「う、うむ……」
恐ろしいものでも見るような目で、従者から後ずさるジークフリート。
もはや、帝国の絶対権力者とは思えない、ただの青年である。
「その後、シャルロッテ様がご無事であったならば、遠からず、殿下は、その思いを告げられたはずです。
しかし、あの襲撃の際に、アビゲイル様は身を呈して、シャルロッテ様を殿下の元に送られたものの……、残念ながら、シャルロッテ様は、その途中でカレンベルク伯爵の手の者に捕えられ……、最終的には、お亡くなりになられました」
「今さらだ。そもそも、生きておればという、仮定の話ではないか……」
「しかし、この世では、殿下がお救いになられたことで、シャルロッテ様はご無事でおられるのです。
ならば、その思いを告げられるのは、とても”自然”ではないですか。
しかも、今の殿下は、アビゲイル様にも特別な感情をご自覚されておられる」
「……、だからこそだ……、俺は……、二人を同時に愛するなど……」




