第48話
「!?」
「何をいまさら驚かれるのですか?
私は、女神様により、この世に殿下と辺境伯閣下と共に舞い戻った時から、殿下の御心と繋がっております。
そのようなこと、当然ご存じでしょう?」
「いやいや、俺は、機微に触れるような、卿の個人的な事柄は存じていないぞ」
ジークフリートは、思いがけない反論に戸惑うが、イーセンブルクの方は、ここぞとばかりに、反論を続ける。
「それは、殿下が知ろうとなさらぬからです。
我々は心が繋がっているのですから、知ろうと思えば、大抵のことはわかります。
逆に、自ら積極的に知ろうとせぬことはわかりません。
私は、殿下の御心に沿って行動する必要がありますので、当然、殿下のことは……」
「な、なにが当然か……。
我が心をのぞき込むとは何事だ!」
「そうはおっしゃられましても、自然と……」
「と、とにかく、特に、そのようなことはだな、
親しき仲であればこそ、許されぬことだ。
俺は、権能で、その気になれば、
シャルやアビーの心の内を読むことはできるが、
その気にならぬよう、ちゃんと……」
「それが、そもそも間違いなのです。
あの聖女様方は、特にお心を読まずとも、ご態度から殿下のことをどう思っているか、周囲のものは誰でもわかっていますぞ」
「い、いや……」
さらに動揺を隠せないジークフリート。
そこに、イーセンブルクが追い打ちをかける。
「それに、アビゲイル様には、既に愛を告げておられるではないですか。
ご自分のお気持ちは、当然、ご自覚がおありでしょう?」
「それは、まあ、そうだが……。
いや、しかし、この世では、まだ俺は、そのようなことはしておらぬ訳だし……、
アビーだけに、急に態度を変えるのは”不自然”ではないか」
「それはそうですね。
この時点での殿下は、むしろ、シャルロッテ様の方に心惹かれていたのですから」
「!?」
「殿下、私は、少なくとも殿下の女性に対する思いについては、すべて把握しております」
唖然として、従者を見つめるジークフリート。
イーセンブルクは更なる追い打ちをかける。
「そのあたりは、特に殿下の御心は、純粋ゆえか、無防備でおられるようですし。
それにしても、とんだ朴念仁でございますね。
お二方の思いをご自覚しながら、ご自覚していない”フリ”をしているのですから」




