第47話
「殿下のおかげで、歌姫様がご回復し、2日後に延期されるものの、無事にご公演も開催されることになり、なによりでございます」
「何が、なによりだ!」
不満げに、ジークフリートが答える。
「我々が、あそこまで妨害したにも拘わらず、あの王太子が、自ら、他国の要人が少なからず居る、あの場で、直接あのような暴挙におよぶとは、私には想定外。
やはり、運命に抗うのは大変でございますね」
一方で、イーセンブルクは飄々と答える。
とは言え、あくまでも、イーゼンブルクは、バーデン辺境伯の臣下であり、陪臣の立場で、主の主君である皇太子に対し直言するなど、厳密な封建貴族社会の帝国では本来は許されないことであった。
実際、かつては、ジークフリートの従者であった時でさえも、都度、直言の許可を得ていたのである。
しかし、女神によって、共に、この世に転移してきてからは、ジークフリートからの許可もあったこともあるのだが、それよりも、ジークフリートの内なる思いに応え、あえて直言を心がけていたのだが、最近は、二人だけの場合には、本当に遠慮がなくなってきた。
さて、先のイーセンブルクの言を受けて、ジークフリートは追及した。
「確かに想定外だが、貴様が備えておらぬはずはない。
そもそも、あやつの劇場への侵入を防げば、このようなことは起きなかったのだ。
わざと見逃したな!」
「まあ、“終わりよければ全てよし”と、言うではありませんか、殿下。
アビー様だけでなく、歌姫様からも絶大な信頼を得られたのですから」
イーセンブルクは悪びれる風もない。その態度を見て、ジークフリートがさらに語気を強める。
「ひとつ間違えれば、どうなっていたことか!
あのような、いたいけな少女を危険な目に合わせるとは!」
「お言葉ながら、殿下は、女性に甘すぎます。
いや、そもそも、女性に対して、弱腰なことが、根本原因かもしれませんな。
殿下は、”この世”では17歳ということになっていますが、実際は”22歳”なのですよ。
5年余り先の世から女神様にこの世に送られた私達は、身も心も、その分、年齢を重ねております。
そのような立派な青年、しかも、帝国の皇太子殿下ともあろうお方が、夜な夜なご自身で、その火照りをお慰めになられているのは、とても看過できません」




