第45話
「ああ……、アビー……。
話し方は変わっていないのね。
面影はあるし……。
私も会いたかったわ、アビー……」
「約束を守れず、突然、いなくなってしまって、申し訳なかったのだ……」
「いいの、いいのよ。気にしないで。
こうやって、また会えたのですもの……」
彼女達の会話を聞いていた教皇国の護衛騎士達は驚愕した。
「もしや、貴方様は……」
ジークフリートがすぐに制したので、皆、黙ったものの、表情はさらに驚きに満ちていた。歌姫と話す少女が、大聖女の娘であると気づいたのである。
ならば、この少女と共に行動している、“ジーク”と呼ばれている青年の正体……
この事実にも気づいてしまったのである。
この世でも有数の権力者が、突然、目の前にいるのだから、当然である。
そんな周囲の変化に気づかず、二人の少女は会話を続ける。
「アイーシャの歌、本当に素晴らしかったのだ」
「ありがとう、アビー。アビーも音楽を続けているの?」
「うん。ヴァイオリンと、最近はピアノも練習しているのだ。
ジークに、色々な曲を教えてもらっているのだ」
「ああ、どんな曲かしら。いつか聴いてみたいわ……」
「そうだ! ジーク、あのGの曲を、ここで弾いてほしいのだ!!」
突然のリクエストに困惑するジークフリート。
「いやいや、リハーサル中だろう。
皆さんのお邪魔をしてはいけないよ」
「いえいえ、我々のことはお気になさらず。
歌姫様は、あのようなことがあったばかり。
とてもリハーサルどころではございません。
できますれば、”北”の音楽を、我々にお聴かせ頂く、栄誉を」
いつの間にか、すぐ傍まで来ていた指揮者が、前のめりになって懇願する。
さすがに、この青年が、“やんごとなき”方だと察し、恐縮しているものの、この機会を逃してはならないという、音楽家の本能が勝ったようだ。




