第44話
「黙れ! 消え失せろ!!」
一喝するジークフリートの頭上に、いつのまにか宝玉が出現していた。
その宝玉から光線が飛び出して、アルベルト王太子と護衛騎士全員の全身にまとわりつき、一気に宝玉の中に引きずり込む。まさに一瞬の出来事であった。
「もう大丈夫だよ。怖い思いをさせてしまったね」
ジークフリートが優しく語りかけると、ようやく、アイーシャはジークフリートの顔を見た。
ジークフリートに、ほほ笑みかけられ、顔を真っ赤にするアイーシャ。
「あ、あの、助けてくださって、ありがとうございました」
「いや、礼は不要だよ。
謝らないといけないのは、むしろこちらだ。
アビーの親友をこんな怖い目に合わせてしまって。
不手際をした部下に代わって、お詫びさせてほしい」
「いえ、そんな……、
助けてくださったので、大丈夫です。
え?
でも、アビーって!
あの、アビーをご存じなのですか?」
「そうだね。
実は、アビーと一緒に、あなたの公演を聴きにきたんだ。
先程まで、客席でリハーサルの様子も一緒に見ていたんだよ。
本当に素晴らしい歌声だったなぁ。
さて、少しは落ち着いたかな?
皆、心配していると思うので、無事を知らせて、安心してもらおう」
「はい。本当に、本当に、ありがとうございました……」
控室の扉周辺には、騒ぎを見た公国の衛兵達がすぐに駆け付けたものの、相手が大国の王太子であり、手を拱いていた。程なくして、劇場外で待機していた教皇国から同行してきた護衛騎士達が駆け付けてきた。
護衛騎士達が、公国の衛兵達を追いやり、扉を破って突入しようとした、ちょうどその時、扉が開き、青年に抱きかかえられた歌姫が出てきた。
「アイーシャ様、よくぞご無事で。貴殿が……、いや、”貴方様”がお助け下さったのですね。感謝申し上げます」
教皇国の護衛騎士長は、すぐに言葉遣いを改めた。青年の醸し出す高貴な雰囲気が、自然とそうさせたのだろう。
無言で頷く青年。
「それで……、アドリア王国の方々は?」
「まあ、気にせずともよい。
こちらに万事任せよ。
教皇聖下には、近々、”ご挨拶”に行く故、その旨も、合わせて申し伝えるがよい」
「ははっ! 承知いたしました!」
「え!? 教皇聖下って……」
「アイーシャ!!」
「え、ええ!?
もしかして、アビー?
すみません、皆様、通してあげて下さい」
駆け寄ってきたアビゲイルは、ジークフリートに抱えられていたアイーシャに抱き着いた。
「ああ、無事で良かったのだ。
ジーク、アイーシャを助けてくれて、ありがとうなのだ。
アイーシャ!
とてもとても会いたかったのだ!!」




