第39話
ロレーヌ公国は、大陸の北部と南部を繋ぐ交通の要衝である五つの回廊のうち、南部側の一つに接しており、回廊による交易を通じて親聖マクシミリアン教皇国とは、良好な関係を維持していた。
また、南部各国による王国連合には不参加ながら、西側の隣国で、大国のアドリア王国とは、相互不可侵条約を締結していた。
なお、東側の隣国は、これまた大国のブルグント王国であり、大国に挟まれたこの小さな公国は、歴史上、両大国により一時的に占領されるなど、度々翻弄されてきたが、次第に大国間の緩衝地とされ、最終的には、独立が認められた経緯があった。
しかし、アドリア王国側で、この条約を破棄し、ロレーヌ公国を併合しようとする兆しが出てきた。
これを回避するため、ロレーヌ公は、長年の取引で培った商人達とのネットワークを通じて、アドリア王家の外戚で、有力貴族のスフォルツァ公との渡りを付けた。
その結果、スフォルツァ公に、秘密裏に多額の資金と教皇国の情報を提供することで、相互不可侵条約破棄の動きを封じることができた。
このため、その後も、スフォルツァ公には便宜を図り、関係維持に努めていた。
さて、最近になって、スフォルツァ公を介して、ロレーヌ公国の建国祭に合わせて、王太子アルベルト訪問の打診があった。
この王太子は、素行が悪く、しかも、ロレーヌ公国併合の急先鋒と噂される要注意人物。まさに、招かれざる客であり、やんわりと断ったはずなのだが、この軽挙妄動の王太子は、お気に召さなかったようだ。




