第38話
その後、程なくして、ボンブルク=エッペンシュタイン大公家の後継者が決した。全快し、健在ぶりを示した大公が発した、その内容は、帝国はもとより、大陸全土を大変脅かせた。
なぜなら、後継者に指名されたのは、争っていた公子達ではなかったのだ。その後継者の実の父親は、出奔していた大公家の公子で、しかも長子であった。
これで血統としては申し分なく、ボンブルク=エッペンシュタイン大公家はもとより、別の公子が継承すると思われていたボンブルク=ボンブルク公爵家の後継者にも内定し、一人で両家を同時に継承する見込みとのことであった。
帝国北部の権勢を一手に掌握する後継者の出現は、帝国皇太子にとっては、宮中を電撃的に掌握したとは言え、大変な脅威であり、当初は帝国の北部と中央・南部との内戦が勃発するのではないかとの憶測もあった。
だが、程なく、後継者を伴ったエッペンシュタイン大公が帝都宮殿に参内し、皇太子に忠誠を誓った。
これにて、ほとんど戦力を消耗することなく、帝国の大半を瞬く間に手中に収めた皇太子に、帝国と長年対立していた南部の王国連合各国は戦慄した。
これまで帝国内の混乱によって、防衛に徹していた方針が変更され、外征の恐れが出てきたためである。
もはや帝国内に敵なしの、若く優秀な皇太子が、空位の帝位を継ぐのは確定路線だが、彼が戴冠に際して、さらに外征による軍事的成果を求めることは、むしろ自然と考える風潮が、長年戦火を交えてきた王国連合側の国々に多かった。
さらに、王国連合の盟主であるアドリア王国は否定しているものの、ここ最近、アドリア王国内で不穏な動きがあるとの噂もあり、王国連合の結束力にも陰りが出てきた。
この一連の状況下、程なくして、一気に注目を集めることになるのが、南部の小国の君主、ロレーヌ公である。
ただし、この時点では、彼自身、そのようなことになるとは、露にも思っていなかった。
交通の要衝の領土を治めるロレーヌ公は、大商人を中心に、各国要人の訪問を精力的に受け入れ、日々多忙を極めていた。
そんなある日、ロレーヌ公は、その日の予定をすべて急遽キャンセルした。最優先で応対すべき要人が、突然来訪してきたためである。
「アルベルト王太子殿下、この度は、我が国にお越し頂き、ありがとうございます」
しばらく無言でロレーヌ公を睨みつけていた訪問者は、突如、抜刀した。




