第36話
「これでも、最低限の要約情報でございますよ。
この状況下で、帝国北部とご婚礼での誼を結ばれるのですから、この程度は知っておいて頂かないと……」
「なんだよ、ボンブルク=エッペンシュタインとか、
ボンブルク=ボンブルクとか……」
「混同を避けるためでございますよ」
「余計にややこしいわ!」
「男系が絶えて、他家から婿を迎えた場合、新たな系譜としてですね……」
「もう、いいって、言っているだろ。
なんで俺が……。
帝国でもない、小さな公国の、爵位もない貧乏貴族の三男坊、
しかも、妾腹の俺が……、
なんで、公家の養子になって……。
しかも、しかも、ああ、もう、なんで、
帝国のお偉い貴族のお姫様と結婚しないといけないんだよ……。
俺は女には困ってなんか、いねんだよ、願い下げだ、こんな話はよ」
「それは、ひとえに、貴方様に発現した権能のためでございますよ」
「そんな権能、ある訳がねえだろうが!」
「露見したのだから、あきらめろ!」
「「???」」
突然、室内に現れた、フードを被った長身の男が話かけた。
「ま、まさか……、で、殿……」
「卿は、あいつの部下だったな。
名も存じているが、ここでは言わぬ。
だから、卿も、黙っているように」
「御意」
「さて、この男か……」
目を細めて、騒いでいた男を凝視する長身の侵入者の男。
フード越しでも、この男がとんでもなく高貴な方であることは、醸し出す雰囲気で、瞬時に理解させられた。
「報告通りのようだな。
俺の権能には劣るが、問題なく看破の権能は行使できるようだな」
「なんだよ、あんた……、え?!」
「無理に結婚せずとも良いが、すぐに俺に同行して、”北”の大公のために働いてもらおう」
「いやいやいや、俺は……。
でも、なんでだ、なんであんたのことが……」
「お前に拒否権はない。
それに、いい加減、自分を偽って、馬鹿なフリをするのも、やめるんだな」
「ええええ……。
それにしても、なんで、あんたが考えていることがわからねえんだ……」
「残念ながら、俺の権能の方が上位のようだ。
下位には上位互換がないのだ。
それでも、この状況下で、ここまで才を磨き上げたのは、誇ってよい」
「そんな権能があるのかよ……。
あんた、いったい何者なんだ?」
「卿は、地頭が良いようだが、口は悪いな。
そこは、徹底的に矯正が必要かな?
まあ、俺には嘘をついても無駄だが……」
「……承知しました」
「ならば、良い。
では、これから、北の大公の元へ行くぞ!」




