第35話
「改めまして、帝国北部の状況を簡単にご説明いたします」
帝国北部に広大な領土を有しているエッペンシュタイン大公領は、帝国にある二つの大公領の一翼であり、貴重な鉱石を多く産出する鉱山を多数占有していることから、経済的に非常に恵まれていた。
しかし、大陸の最北に位置し、農作に適した土地が少ないため、不足する食料は、南部に点在する飛び地の領地や、他領からの輸入で賄っていた。
大公位は、3代目までは特に問題なく継承されてきたが、4代目のエッペンシュタイン大公には、跡継ぎの男子がおらず、娘が、隣領の領主で、当時宮廷で権勢を誇っていた帝室の傍系・ボンブルク公爵の次男と結婚し、エッペンシュタイン大公領を受け継いだ。
これにより、ボンブルク=エッペンシュタイン大公家が成立した。
一方、男系の本家筋にあたるボンブルク公爵家は、混同を避けるために、ボンブルク=ボンブルク公爵家と呼ばれた。
当初は良好であった両家の関係も、世代を経るごとに、関係が複雑となり、エッペンシュタイン大公領とボンブルク公爵領は長らく混乱した。
しかし、先々代の皇帝の盟友であった当代のエッペンシュタイン大公がボンブルク公爵の一人娘の公女と結婚したことで、両家の関係は“表向き”は改善された。
だが、エッペンシュタイン大公の妻が亡くなり、大公も高齢で体調を崩したため、彼らの息子である公子達が大公家・公爵家の跡継ぎを巡って争い、両家は再び混乱した。
そんな中、仲裁を依頼していた先帝も暗殺されたことから、公子達の争いの歯止めがなくなり、それぞれが傍系を取り込んで派閥を形成したため、混乱は北部全体に広がっていた。
「長いんだよ。簡単にって、言っただろうが!」




