第0.4話
従者の青年は、驚嘆していた。
先程から、小さな女の子が主と立ち合いをしているのだが、なんと主が、こんな子相手に、自身の権能を行使しているのだ。
それほどまでに、この少女、かなり幼い背格好の、この子の剣技が凄まじいのだ。正直、自分の自信を無くしてしまうほどに……。
「おい、マックス!
我が弟子とは言え、まだ年端もいかぬ相手に、よくも、まあ、惜しげもなく、権能を行使できるな?
“鉄壁バーデン”の名が泣くぞ!」
「いやいやいや、おかしいだろう?
なんなんだ、この子は?
お前、この子の相手をよくできるな?」
「まあ、俺も、いまや、それほど余裕はないからな。
どうしても怪我をさせてしまう。
お前も気さえ使わねば、権能なしでも大丈夫だろうが?」
「それはそうだが、こんな女の子に、弟子とは言え、怪我をさせるとは、お前は鬼畜か!」
「バーデン卿、ご遠慮無用に願います」
その少女は、主に願いを口にする。
「マックス!
我が弟子の願いを叶えてやれ!
幸い、ここは、大聖女様のお屋敷。
大聖女様からは、ちゃんと治すから、この子の指導は遠慮なくせよ、と言われている。
卿も、遠慮はせずとも良い」
「いや、しかしだな……。
ええい、どうなっても、知らんからな!」
主が鋭い一撃を加える。
しかし、その少女はなんなくかわし、間髪入れずに、反撃してくる。
「まったく、どうなっているんだ?
とても反撃できそうにないぞ?」
「マックス、お前は相変わらず、攻撃が下手だな。
防御は、剣聖と言われる俺よりも完璧なのに。
我が弟子、フリーデは、お前にはちょうど良い相手かも知れぬな」
「な、なんだと!
このような女子に後れをとる我ではないわ!」
主は、さらに鋭い斬撃を放つ。
さすがに、これでは大怪我を負わせてしまうと、焦った従者だったが、なんと、これすら、余裕でかわす少女。
これには、驚愕だった。
歴戦の戦士を多数、屠ってきた主の斬撃を、あれほど鮮やかにかわす者を、剣聖以外に初めて見たのである。
「マックスよ。前から言っているだろう。
お前の攻撃は読みやすいのだ。
素直が美徳の卿だが、それでは、ダメなのだよ」
「くっ……、悔しいが、そのとおりのようだな。
ならば、これでどうだ!」
主は、予備動作なしの鋭い斬撃を次々と繰り出す。
しかし、これすら、少女は難なくかわす。
まるで、そうすることが事前にわかっていたかのように。
実は、秘匿しているが、従者もなんとなく、相手が次になにをするのかがわかる。それは権能と呼べるほどのものではないが、普通の人間では感知できないことがわかる。
だからこそ、この少女の異常性もわかるのだ。




