第30話
瞬時に、大陸の東海岸から、西側のブラウンシュヴァイク大公領に戻ってきた三人。ちょうど、こちらは、夕方になりはじめたところ。
先程まで、夜だったのにと、一日に二度も、夕方を経験した少女達は、とても興奮していた。
「やっぱり、すごい!!
この世が、とても大きな球体であることは、知識としては承知していたけれど、正直、半信半疑だったの。
でも、今は、実感したわ。それに、初めて見た海……。
ああ、本当に刺激的な経験だったわ。ありがとう、ジーク」
と、シャルロッテが話すと、続けて、アビゲイルも、
「そうなのだ。とても面白かったのだ。
それに、あの曲、母上にも聴いてもらうのだ。
そうだ、ジーク。これから、母上に……」
「アビー、残念ながら、もうすぐ、お楽しみのディナーの時間だよ」
「そうだったのだ。
本当に、なんだか、時間感覚がおかしいのだ。
でも、たしかに、お腹は空いてきたのだ」
一旦、その場で別れ、各自の私室に戻った三人は、すぐに着替えて、大聖女一家のダイニングルームに向かった。
すでに、そこには、大聖女と大公がいて、食前酒を楽しんでいた。
「家族水入らずのディナーね。本当に楽しみだわ」
「家族と言ってもらえて、嬉しいよ、ブリュンヒルデ」
ブリュンヒルデに、照れながら答えるブラウンシュヴァイク大公。
「ええ、伯母上。私もそう言ってもらえると嬉しいです」
と、続けて、ジークフリートが答えた。
「何を言っているのだ、二人とも。
それは、当たり前なのだ。
ジークも、おじさんも、間違いなく私たちの家族なのだから」
「それにしても、おじ様。
いつになったら、私たちのお父様になってくれるのかしら」
「いやいや、シャル。それは……」
「そうだぞ、大公。いい加減、伯母上を娶ったらどうだ」
「いえいえ、殿下。それは……」
「おほん、おっほん……。
それよりも、三人は、どこかに行っていたのかしら?」
「母上、海を見てきたのだ!ジークが連れて行ってくれたのだ!」
「そこで、ジークと演奏したのよね、アビー。
それから、あれ、ジーク、どうしたの、顔が赤いわよ。
なにか思い出したのかしら」
「なんでもない。日に焼けただけだ……」




