第29話
「さて、帰ろうか?
爺をはじめ、皆、突然の訪問で迷惑かけたな」
「いえいえ、殿下。
先にも申し上げましたように、こちらはいつでもお待ちしておりますので、お気兼ねなく。
ところで、帰りの馬車を手配いたしますので、しばらくお待ち頂ければ……」
「それは、不要だ。
俺には女神様から与えられた権能があってな。
場所さえ特定できれば、どこでも転移できるんだ」
「転移……ああ、さきほどおっしゃっていたように、飛んで来られたのでしたな。
爺は無学なもので、仔細はわかりかねますが、まあ、殿下がそうおっしゃるのなら……」
「突然、この場から俺達が消えてしまうが、慌てないように。
バーデンには、俺の方からも、後で世話になった旨をちゃんと伝えておくよ」
「消えてしまわれるのですか……、大丈夫なのでしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。安心しろ。
それではな。皆、ありがとう」
「皆さま、ありがとうございました」
「ありがとうなのだ」
「それじゃ、二人とも、こっちに来て、目を閉じてくれ」
シャルロッテとアビゲイルがジークフリートに抱き着く。
「いやいや、そんなに、くっ付かなくても、大丈夫なんだが……」
「大丈夫よ、ジーク」
「大丈夫なのだ、ジーク」
「本当に仲が良いのですね。殿下、また、お顔が真っ赤でございますよ」
「ひ、日焼けしただけだ……、それではな」
三人の全身を光が包み込み、光の柱となって、天井に向かって放たれ、その場から消失した。
「な、なんと!」
別邸の使用人達は、皆、驚きのあまり、腰を抜かした。




